教室に「個人的に調べていることを授業します」と入ってきたのはカズレーザー。『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)は、元々、著名人が犯した「しくじり」の原因や教訓を本人自ら先生役となり、事前に作成した「教科書」を使って授業形式で講義するという番組だった。2014年に深夜番組としてスタートするとすぐに評判を呼んで翌年にはゴールデンタイムに昇格。だが、約2年で放送時間を変えると2017年9月でレギュラー放送は一旦終了した。それでも2019年4月、深夜番組として復活。その間、著名人のしくじりだけではなく、歴史上の人物や映画、ゲーム会社など多様なジャンルのしくじりも扱うようになった。
今回、カズレーザーが行ったのは「ガセネタに惑わされないための授業」。コロナ禍でトイレットペーパーが品切れになるというデマによって買い占めが発生したことが記憶に新しいが、そんな情報を安易に信じ込み、被害を受けたり迷惑をかけたりしないように学んでいこうというものだ。
まずカズはガセネタの種類を、事実に反する噂=「デマ」、他人を演じて不正を働く「なりすまし」、虚偽・デタラメな内容の情報・報道「フェイクニュース」に分類し、1973年に「信金が危ない」というデマが広がった愛知の「T信用金庫事件」、1910年に科学者が「地球の空気がなくなる」と言ってパニックになった「ハレー彗星接近事件」、同年、ただの大学生たちがなりすました「エチオピア皇帝イギリス訪問事件」、1972年、捏造された写真から大ニュースになったフィリピンの「原始人発見事件」と、それぞれ過去に実際にあった事件を紹介していく。その中で「人間はネガティブな情報を信じてしまう傾向がある」というデイルマンという学者が唱えた「ガム・ミルク理論」や「小さなウソでも合わせると大きなデマになる」という「もう一つの月理論」、「一部の情報だけを見て全てを判断しがち」な「いびつなアルマジロ理論」などデマを信じるメカニズムを解明した理論を解説していく。
聡明なカズレーザーらしく体系的でわかりやすい授業で、日々デマと対峙しなければならない現代の人々にとって“教科書”になるべきものだった。
と、それだけでは終わらない。授業の最後、ある事実が明かされる。そう、「ガム・ミルク理論」などの理論は、カズ自身がでっちあげた架空の理論だったのだ。完全に騙された。数秒前までデマに踊らされやすい人は見てほしいなどと、自分はそうじゃない側の立場から思っていたのが心底恥ずかしくなる。いかにガセネタを信じやすいか、身を以(もっ)てその怖さを体感させられた鮮やかな授業だった。
『しくじり先生 俺みたいになるな!!』
テレビ朝日系 月 24:15~
https://www.tv-asahi.co.jp/shikujiri/