「伊勢谷友介容疑者、逮捕――」
9月に報じられた演技派俳優逮捕の一報は、日本中に衝撃を与えた。だが、近年は伊勢谷容疑者の前にも芸能界からはピエール瀧、沢尻エリカ、槇原敬之など多くの人気タレントたちが違法薬物で逮捕されている。
また、スポーツ界からも10月に入って東海大学野球部の学生が大麻を使用した疑いで、部の活動が無期限停止になるなど、その影響は芸能界に留まらない。
翻って、不思議なもので、フィクションの世界では海外ドラマの「ブレイキング・バッド」や「ナルコス」をはじめ、違法薬物をテーマにした作品はいつの時代も人気を博している。
ではなぜ人は関われば大きな代償を払うことを分かっていながら、これほど薬物の物語に熱狂するのだろうか――。現在、講談社コミックDAYSで連載中の人気作『満州アヘンスクワッド』の原作者・門馬司さんに話を聞いた。
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1931年に起きた満州事変から90年が経とうとしています。
その後に建国された満州国では、歳入予算6400万円のうちアヘン専売による収入が1000万円を占めていたといわれています。まさに、満州という国はアヘンという薬物で栄えた一方で、アヘンとともに滅びた国と言えると思います。
アヘンで栄えた満州という地域の現実
この『満州アヘンスクワッド』という作品は、関東軍として満州にやってきた貧乏兵士がアヘンの密売に手を染め、成りあがっていくクライムサスペンスとして描いているのですが、いろいろ過去の資料を調べてみると、いまの時代にもつながるいろんな人間心理が垣間見えてきます。
アヘンって実は日本国内だと御禁令が結構早めにでているんですよね。というのは、アヘン戦争で清がボロボロになったのを見ていたので、それをもって日本は結構早い時点から厳しく規制をしたんです。だから日本の人たちにとって「アヘン」ってあまりピンとこなかったんだと思うんです。
ところが満州となると、その状況が変わってくる。満州はアヘンという薬物にかなり汚染された地域だなという印象でした。だからこそ、そこを舞台にしてみようかなと。日本人もたくさんいましたし、読者も興味を持ちやすいだろうということで満州を舞台に選びました。