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2020/10/30

作った本人がテストプレイで「思わず徹夜」

 同シリーズを手掛けたのは、コーエーテクモゲームス会長の襟川陽一さん。ゲームに表示される「シブサワ・コウ」は、クリエーターとしてのペンネームです。これまで何度も取材する機会をいただいたのですが、栃木県足利市という歴史の色が濃い街で育ち、東映の時代劇も見ていた「もともと歴史好き」なのだそうです。還暦を過ぎた今でも、「ドラゴンクエスト」などのRPGから、「スプラトゥーン」などのアクションシューティング、さらにはVRまで、自社だけでなくライバル会社のゲームもプレーし、エンタメコンテンツを見るために舞台にも足を運ぶといいます。

最新作ではさらに武将の登場人数も増えた ©コーエーテクモゲームス(信長の野望「大志」より)

「信長の野望」の誕生は、1978年の起業後にヒットしたPCゲーム「川中島の合戦」(1981年)というゲームの人気を受けて、好きな織田信長に目を付けたのが始まりでした。それまでのシミュレーションゲームは戦闘のみでしたが、「信長の野望」は領国経営(経済の概念)を取り込んで、戦争と経済を“両輪”にして誕生。タイトルの「信長の野望」も、信長の天下統一の志から合う言葉を選び、さまざまな候補から「野望」と名付けられました。

 襟川さんは、頭の中で完成予想図を描き、約2カ月かけて制作。テストプレイでは、自分で作ったゲームにもかかわらず、その予想を遥かに超える面白さにのめりこんで徹夜をしてしまい、天下統一をしたときは思わず「やった!」と吠えて大喜びしたといいます。

1作目のテストプレイから約40年。グラフィックもどんどん変化してきた ©コーエーテクモゲームス(信長の野望「大志」より)

 PCの性能や使えるデータ容量がアップするのに合わせて、ゲームも可能な限りパワーアップ。ロングシリーズになるにつれて武将数も増えていき、今では2000人以上ですから、歴史好きでも知らない武将がいるはずです。

武将の能力設定は「数値が1違うだけで大騒ぎになる」

 その武将ですが、能力の設定はユーザーからいろいろな要望が寄せられるクリエーター泣かせのテーマだといいます。わずかな能力値の差にもこだわる熱烈なユーザーから「この武将の能力は98じゃない! 97だ」など、「こうするべき」という思いのこもった指摘が来ることも少なくないからです。

武将の能力設定は数字が1つ違うだけで大騒ぎになる ©コーエーテクモゲームス(信長の野望「大志」より)

 武将の能力値は、これまでのシリーズの設定、合戦の実績を総合的に勘案して決めており、その結果として一応“最強武将”といえば、上杉謙信になっています。ただ、数値が劣っていても「特殊能力」でゲーム中の使い勝手は変わるそうで、「〇〇が最強」とは一概には言えません。また、一度決めた武将の能力設定を維持することもなく、毎回調整をかけ、開発者の考えによる違いも踏まえながら、同じ能力の武将が固まらないようにも配慮しています。

“最強”は上杉謙信だが、“使い勝手”はまた話が違うところがゲームの魅力をより引き立たせている ©コーエーテクモゲームス(信長の野望「大志」より)

 さらには、大河ドラマなど一般からの注目度、歴史のニュースにも目を光らせ、そこでも調整。大河ドラマ「独眼竜政宗」の影響を受け、当時は「謀略にたけた武将」としていた最上義光を、調べ直した結果、「戦闘に強い武将」に変更したケースもあります。