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わたしの「神回」

私のゲーム人生は『アートディンク』が作り上げた

そして、神は「ルナティックドーン 前途への道標」を我に与えられた

2020/05/08

 好きなことを書いていいらしい。連載の仕事を頂戴していると、どうしても読者の顔がちらついてしまう。ましてや、文春オンラインとなればなおさらだ。芸能界から政治まで、世の中のちょっと変わったすごい話を最先端のかぶりつきで鈴なりになって見物したい、それでいて土俵には絶対に上がりたくないナイスミドルの男性を中心に読者が構成されているのが文春ブランド。

 そこにポップカルチャーや古いPCゲームの話を連載枠にもってくることなど禁忌中の禁忌。いまやこの世はオンライン媒体の天下であり、各メディアが読者数とPV数を巡ってしのぎを削っているところに、少数民族である我ら古き良きPCゲーマーの趣味の記事などきっと誰もクリックしてくれないに違いない。そう思って、こんな記事は本来絶対に文春には寄せないのである。

写真はイメージ ©︎iStock.com

 だがお前ら聞いてくれ。私はPCゲームが好きなんだ。

プログラムを打ち込む小学生の頃、そして『信長の野望(初代)』

 いまでも深夜、妻子が寝静まった後で仕事を終えてゲーミングPCに電源を入れsteamを立ち上げる時が最高の喜びだ。はるか37年前、小学生だった私が親父にせがんでPC-8001mkIIを買ってもらい、『マイコンベーシックマガジン』に掲載されているクソゲーのプログラムを打ち込んで、全然面白くないけど自分が苦労して打ち込んだゲームなのだから楽しいと自分を納得させながらも、N-80 BASICが貧弱なグラフィックでゲームの世界に連れて行ってくれるという興奮を呼び覚ましてくれる。

写真はイメージ ©︎iStock.com

 技術は進歩して、ゲームもそれと共にどんどん表現力を強化していったのだが、ゲームが描き出す世界を自分の認識野に置き換えてのめり込むという作法はいまと変わらない。当時、光栄であった日吉の会社が紡ぎ出した『信長の野望(初代)』が私を戦国の世に誘(いざな)い、旧システムソフトが『大戦略II』を、T&Eソフトが『ハイドライド』『DAIVA(ディーヴァ)』シリーズを、潰れたスタークラフトは『MIGHT&MAGIC』や『PHANTASIE』を、ハミングバードソフトが『ラプラスの魔』や『ロードス島戦記』を、そしてハドソンが名作『サラダの国のトマト姫』を、そしてリバーヒルソフトが『琥珀色の遺言』を……。四半世紀以上のときを超えて、いまなお私の脳裏に鮮明にPCゲームの名作が蘇る。

 いまでも思い出す、クリスタルソフトの快作『夢幻の心臓II』で時を進めるリターンキーのうえに重しを置いたままダンジョンの中でパーティーを放置し自動戦闘を進めて経験値を稼ぐ技をやろうとして、友達の家に遊びに行って帰ってきてみたときにパーティーがなぜか全滅していた時の悲しさ。呆然とし、憮然とし、愕然とする、若き日の思い出がそこにはあるのだ。