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わたしの「神回」

私のゲーム人生は『アートディンク』が作り上げた

私のゲーム人生は『アートディンク』が作り上げた

そして、神は「ルナティックドーン 前途への道標」を我に与えられた

2020/05/08
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進化を続けた『ルナティックドーン』シリーズ

 そして、さらに『ルナティックドーン』シリーズの進化は続く。その続編にあたる『ルナティックドーン 開かれた前途』では、善悪、混沌と秩序各々に4つの国家があてはめられ、国家の勢力が道で繋がれた各都市に影響を与えている。

 プレイヤーに与えられているのは、限りない自由。国のために戦うもよし、街の道具屋や武器屋から商品を盗んで生計を立てるもよし。仲間を募って住民のためにダンジョンに巣食うモンスター退治に繰り出したり、重要アイテムを持つ人物を町の広場で見つけて盗んだり、暗殺したり。お尋ね者になって街に入ろうとしたら「いたぞ!!」と追いかけ回される。街にいるイモータルさんというボケた爺さんが実は神であって、彼から授けられるイベントを抜けると神エンドがあってみたり、あるいは地球のリセット装置を起動させると世界が破滅エンドになってしまったり。

ルナティックドーン 前途への道標

 その最終形が、次回作になる『ルナティックドーン 前途への道標』なのですよ。広大なファンタジー世界。築き上げられた王国、人々の息づく街、そして得体のしれないモンスター。プレイヤーの行動は、ひたすらに『自由』。

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 いまでいう、オープンワールド系ゲームと言われれば『Elder Scrolls』シリーズや『モンスターハンター ワールド』『グランドセフトオート』など数多あるけれど、本当の原型はここにすでに完成していたと思うんだ。綺麗な映像で美男美女がキャッキャウフフしながら世界を救うファイナルファンタジー的なRPGが王道だとするならば、私が愛した『ルナティックドーン』はファンタジーをより精密に実現しようとし、何度も失敗し、試行錯誤を繰り返しながら磨き上げられた一作。

栄えある「ルナティックドーン 前途への道標」プレイ画面。地味だけど想像力ですべてを補完

 私は素晴らしいゲームだと思うのだが一般的にこんなゲームがウケるわけねえだろと思いながら、そのテーマは実はゲーム史の中でも語り継がれるジャンルの草分けとして評価されるべきだと思う。アートディンクももっと商売がうまかったなら、美麗なグラフィックで優れたゲームテーマで「一般的にこんなのウケねえだろ」と物好きに馬鹿にされながらも支持者の野太い声援で盛り上がったのに、と残念な気持ちになるのだ。

 PCゲームからのクリエイティブで言うならば、光栄の『信長の野望』や『三國志』シリーズがこぢんまりとナンバータイトルとして再生産される一方、埋もれて行ったシステムソフトやアートディンク、ハドソンといった残念ながら伸びなかった会社、惜しいタイトル、もったいないゲームテーマを思い返す。

コーエー『信長の野望』シリーズのイチオシは『天翔記』です。大名によって出現武将の偏りが大きすぎる問題を、成長度という基軸である程度カバーできる名作

 いやー。あのころはゲームが楽しかったなあ。いまでも楽しいけど。

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