もう“カレーライスの女”と付き合っちゃえ!
『シングルベッド』(1994年)『ズルい女』(1995年)『いいわけ』(1996年)など、シャ乱Qの歌に出てくる男性は、いい感じでカレーライスの女と同族なのである。元カノをベッドのなかで思い起こし悶々とするタイプ。思い出フィルター掛けまくりで元カノを美化するタイプ。寝る前にいろいろ考え過ぎ、深夜SNSでポエムっぽいこじらせコメントを書き事故って朝慌てて削除する男性像をありありと想像してしまう。
「淋しい夜はごめんだ」と泣く『いいわけ』の主人公、もしくは「今夜の風の香りは あの頃と同じで」と思い出に浸る『シングルベッド』の主人公なら、カレーライスの女の心の痛みを理解できる気がする。『カレーライスの女』と発売年数はかなりズレるが、妄想の世界は自由だ。
ファミレスあたりで一晩中、お互いの恋の苦労を吐き出し、寂しがりや同士、新たな恋が生まれるかもしれないぞとワクワクしてしまった。同族嫌悪が起こり、最悪の事態になる気もしないでもないが。
『カレーライスの女』で想像の翼を広げてしまったが、話をソニンに戻そう。彼女のソロ曲は『カレーライスの女』以外も、とてもエキセントリック。世界観が特殊なのでイロモノ臭が強くなってしまったが、EE JUMPと同じく名曲揃いである。
新曲は幸せそうだった。でも……
どの曲も、隣で寄り添ってくれる恋人の姿は見えない。本音を打ち明けられる友達の姿も見えない。薄幸とはまた違う、「逃幸」とでも言おうか。幸せになりたいと叫びながら、なぜか自ら無意識的にそれを遠ざける女の子が仁王立ちしている姿が見える。『津軽海峡の女』では演歌で。『合コン後のファミレスにて』では吉田拓郎を彷彿とさせるフォークソングで。そして『ジグソーパズル』では、橘いずみを思い出させるロックで。スキマスイッチ作詞作曲の『あすなろ銀河』は、足がすくみそうな不安と、それを包み込むようなやさしさの両目線を感じて、泣ける。
「なんもない」ところから再スタートし、懐かしい音楽のジャンルを通し、様々なひとりぼっちの女の本音を表現してきたソニン。この経験と、過酷な挑戦をやり遂げてきたエネルギー全てを舞台に集約し、日本屈指のミュージカル女優として輝いている。2021年1月からは、ミュージカル『マリー・アントワネット』に出演。FNS歌謡祭での歌唱も素晴らしかったが、その歌声を舞台で味わいたいなあと思う。彼女から放たれるガツンと重量のある感動を体で受けてみたい!
さて、いろいろと話が飛んでしまったが、『カレーライスの女』はその後どうなったのか? ドキドキしながら新曲『ずっとそばにいてね。』を聴いた。
幸せそうだった。でも、やっぱり重い女だった。これぞソニン。さすがつんく♂!