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“ドラフト最下位”のヤクルト新人広報・三輪正義「プロ野球に入ってくる後輩たちへ」

文春野球コラム クライマックスシリーズ2020

2020/11/15
note

100人の選手がいれば100人の苦労がある

 つねに意識していたのは「何を、どう考えて、野球に取り組むか」ということ。結果で評価される世界ですから、成功、失敗は仕方がない。ただ、プロ野球選手でいることに決して満足しない。周りは、三輪正義個人ではなく「プロ野球に属している三輪正義」だから声を掛けてくれる――いわば、「プロ野球という世界の存在」がいかにすごいかということです。

 ヤクルトでいえば若松勉さん、高津臣吾監督、宮本慎也さん、池山隆寛二軍監督だったり、それこそ、王貞治さん、長嶋茂雄さんという偉大な先輩方がいたからこそ「プロ野球」があり、今日まで「国民的スポーツ」として認識されてきたんです。

 僕みたいな選手は、そういった先人たちが長い間をかけて、作り上げたものに泥を塗ることのないよう、努力せねばならない。歴史を絶やさぬよう、必死でプレーしなくてはならない、ということを心に留めていました。もちろんプロ野球は職業ですから、自分を第一に考えるのは当然。でもプロ野球選手になる、ということはトップカテゴリー選手として、ひいては野球界の発展に寄与することだと思っていました。

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 僕はよく「苦労人」と言われますが、その意味がいまだによくわかりません。メディアの人は「王道を通ってこなかった」ということでそう呼ぶのかもしれないけれど、僕からすれば「王道」である名門校で野球をやってきた人のほうが苦労人だと思います。ライバルだったり、周りの人々との関係で、窮屈な思いをしていたり。その点僕は恵まれています。プロに入る前は、いつでも試合に出られたし、のびのびとプレーしていましたから。

 100人の選手がいれば100人の苦労がある。プロに入って来る人はみんな苦労人だと思います。独立リーグ時代、片道4時間バスに揺られた後に試合をしたり、自分でユニフォームを洗濯したり、炊事をしたり、ということはあったかもしれないけど、学生寮で先輩から野球に関係ないことを命令されるほうが、僕にとっては「苦労」となるはずですから。

 先を目指すために練習するのは当たり前、試合で結果を残すのも当たり前。結果的にプロに入るためには軟式野球、独立リーグをたどるしかなかったから、それは「苦労」でもなんでもなかった。

 入団してくる後輩たちには僭越ながらひと言申し上げたい。

 ドラフト1位だろうが、最下位だろうが、育成指名だろうが、やる野球は同じ。プロ野球という最高の舞台でも、野球は同じはずです。ただ、自分がどうプレーし、どう生きていくかを考えることで、その後は変わってきます。

 自分のため、ファンのため、支えてくれている人のため。そして野球界のために野球をやってほしい。ドラフトで選ばれたということは、そうした責任も負っているはずなんです。

 あっ、なにか悩みがあったら、いつでも相談に乗ります。ドラフト最下位指名でフォアグラの味はわからない僕が、12年間でのプロ生活の酸いも甘いもお話しします。そのかわり、僕の企画には全面的に協力してもらいますね……。

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