「ビールかけの後の洗濯がまた大変なんですよ!」
「ホークスが優勝したらビールかけがありますよね! ビールかけの後の洗濯がまた大変なんですよ! ビールで臭いし、重いし、かなり時間がかかるんですが、これがまた嬉しい悲鳴なんですよ! でも、今年はそれが無かったから、優勝はとても嬉しいけどちょっと変な感じですね。」
新型コロナウィルスの影響で、優勝の後の大仕事が今年は無かった。また、今シーズンは、洗濯機は消毒をし、洗剤にも除菌剤を入れて洗濯するなど、手間を増やしてでも選手が安心してプレー出来るようにやれる事は全てした。博文舎クリーニングさんとしても2020年は特別なシーズンだったのだ。
続けて洗濯に対する想いを話してくれた。
「いつも、ホークスが勝つ為に、勝つ為のクリーニングをしてます! 選手が気持ち良くプレー出来るように、怪我しないように、怪我するなよ~と念を込めてます!」
もはやお母さん! 洗濯して補正して願って、少年野球をしてる息子の為に頑張るお母さんの姿そのものだ。
現場責任者の木場さんはいつも球場に洗濯物を取りに行き、選手がユニフォームを脱ぎ終わり洗濯物が全て出るまで待機し、試合終わりの選手を近くで見守っている。だから洗濯物を通して選手の事も良く知っている。
一番ユニフォームを汚す選手は、練習に熱心で試合で全力なベテランの松田宣浩選手だという。毎年新しいユニフォームのズボンが年によって少しだけ形が違うらしく、自分がしっくりくる2019年時のズボンを修理しながら穿き続け、熱い部分だけでなく、細部にまでこだわっている松田選手を知っている。
昨シーズンまでの一軍通算成績46試合に出場し、打率.196、1本塁打と振るわない成績だったが、6年目の今シーズンを背水の陣のシーズンで臨み大活躍した栗原陵矢選手。彼は洗濯物は全て畳んで洗濯カゴに出す程、全ての人に配慮していた気遣いの男だと知っている。
帽子の裏側に家族4人のイニシャルを入れて家族と共に戦っている千賀滉大投手を知っている。そして最多勝を獲った。
9月12日の西武戦で2失策し涙を流し、試合後に居残りで守備練習をしていた周東佑京選手を知っている。また、その指導をしていた本多雄一コーチも同じ様に、現役時代居残りで守備練習をしていたのを知っている。なぜなら、最後の洗濯物を出すその時までみんなを見守っているから。
クリーニング屋さん「博文舎クリーニング」の“お母さん”達はホークスという野球チームで頑張る息子達のユニフォームを、真っ白に洗濯し、想いを込める事によって、いつも陰ながら応援している。
ホークスの強さはこう言う見えない人の想いの強さにもあるのだ。そして、“お母さん”にも言いたい。優勝おめでとうございます。そして、“お母さん”と息子達が次に勝ち獲るのは4年連続の日本一である。
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