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「勝つための洗濯をしてます」ホークス優勝の影の立役者 クリーニング屋さんがユニフォームに込めた想い

文春野球コラム クライマックスシリーズ2020

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 結果的に圧倒的な強さでパ・リーグ優勝を成し遂げたホークス。勢いそのままロッテをCSで迎え撃つ。

 ホークスの3年振りのリーグ優勝の要因をいくつか挙げるとするならば、投手陣の安定感、シーズン後半の打撃陣の破壊力、そしていつも綺麗で真っ白なユニフォーム。

 ……ん? 真っ白なユニフォーム?

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 そう! 毎試合毎試合選手がアグレッシブなプレーをしてユニフォームを汚したとしても、次の試合には綺麗なユニフォームを着ている。だから選手は伸び伸び気持ち良くプレー出来たのだと思う(ちょっと強引?)。

 もちろん各選手数枚のユニフォームを持っているが、ユニフォームは毎試合綺麗に洗濯されている。

「みんな洗濯どうしてるのかなぁ? 奥さんがしてくれてるのかなぁ? 独身の人は毎日大変そうだなぁ?」と思っている方も少なくないはず。ユニフォームを綺麗に洗濯してくれているのは奥さんでも自分でもなく、「博文舎クリーニング」さんというクリーニング屋さんなのだ。

博文舎の皆さんと一緒に ©ノボせもんなべ

何故ホークスのユニフォームを洗濯するようになったのか

 ホークス優勝の影の立役者、博文舎の中島社長と現場責任者の木場さんにお話を聞いた。余談だけど、以前コンビ時代に番組で取材させて頂いたこともあり、ユニフォームだけでなく9月からの僕のピン芸人としての再スタートですら気にかけて下さっているとてもやさしいお二人だ。

 何故ホークスのユニフォームを洗濯するようになったのですか?

「今年でホークスのユニフォームを洗濯させてもらって14年目になります。きっかけはホークスのユニフォームを洗濯してくれるクリーニング屋さんを募集していたことでした。平和台球場の頃から野球を観に行っていた自分としては、仕事でホークスに携わることに憧れがあり、これは素晴らしい機会だという事で全力で取りにいきました!」

 自分の会社がホークスの力になれる事が嬉しくてたまらなかったそうだ。しかし、いざ始めてみると一般のお客さんのクリーニングとはワケが違った。まず量が桁違い。博文舎さんはホークス一軍選手はもちろん、二軍選手、三軍選手、そして監督コーチやスタッフさん全員のユニフォームだけでなく、キャップ、アンダーシャツ、タオル、靴下、手袋、パンツなどなど洗濯を行っている。一軍、二軍の試合が共にナイターの時には時間も重なりとても大変だそうだ。

 全選手の洗濯物を回収して、洗濯に取り掛かれるのが大体深夜0時。しつこい汚れには特殊な機械や洗剤を使い手作業で落とす。帽子は全て手洗い。ズボンが破けていたりチャックが壊れていたりボタンが取れかかっていたら、修理もする。それを選手ごとに分けて、次の日がデーゲームの日には朝6時頃には各選手ロッカーまで届けなければいけない。

 これをホームゲーム毎試合行っている。想像しただけでもドッと疲れる。ただ、石川柊太投手が先発の時は「今日は早めに取り掛かれるぞ~!」と思うらしい(よっ! さすが今シーズンスピードアップ賞最有力投手!)。

石川投手のユニフォーム ©ノボせもんなべ

 しんどいと思った事はないんですか?

「そりゃありますよ~(笑)。でも、ホークスのユニフォームを洗濯している事によって、球場に来てくれてるお客様、テレビを見てる視聴者、何万人何十万人の方々に自分達のクリーニングの仕事を見て頂ける。それ以上にとてもやりがいがある仕事です!

 もちろんその分プレッシャーもあります。テレビで試合を見ていても、汚れはしっかり落ちてるか? 破けてるとこはないか? そういうところばかり見てしまうし、滑り込むプレーをした選手がいたら、今日の洗濯でしっかり落としてあげよう! という目線で野球を見てしまいますね! それに、もしもミスがあった場合に球団やファンの皆さんに迷惑がかかってしまう。ホークスの洗濯を受けてからは何かあった時にいつでも出動出来る様に晩酌をしなくなりました! それでもホークスの為にもやりたい!」

 人一倍仕事に責任感のある中島社長!

 上司にしたいランキング勝手にランクインです!

 嬉しそうに話す中島社長からは仕事を超えたホークス選手に対する大きな愛を感じた。

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