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文春野球コラム

2020年は最高だった……なぜならファイターズに上沢直之が帰ってきたのだから

文春野球コラム 日本シリーズ2020

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 ベイスターズとの文春日本シリーズなので、もしかしたらベイスターズファンの方も読んでくださってるかも知れない。HITボタンは押さなくて結構だから日ハム馬鹿の話を聞いてくれ。今年はコロナで色々あったけど僕らには最高のシーズンだったんだ。順位が5位だったなんて本当はどうでもいいんだ。野球の神様にいくら感謝しても足りない。

 札幌ドームのマウンドに上沢直之を返してくれたんだ。

左膝骨折から復帰を果たした上沢直之

強烈な打球がヒザに… 上沢を襲ったアクシデント

 覚えているだろ。去年の6月18日、ハマスタ、交流戦のDB-F戦1回戦。ベイスターズ先発は平良拳太郎、うちはエース上沢だ。上沢はね、初めて開幕投手を務め、エース格を手にしたシーズンだった。ハムには有原航平がいるじゃん。「ダブルエース」って便利な言い方もあるけれど、ここはプライドとプライド、火花の散るところだ。上沢はキャリアで初めて有原の上に立ったんだ。もしかしたら首脳陣にはそれで有原の負けん気に火をつけようって狙いもあったかもしれない。6月中旬までのところ有原は抜群の出来だった。上沢は夏場へ向けて調子を上げつつあるタイミングだった。僕らはその後、「上沢vs有原」がどこまでバチバチやるか楽しみにしていたんだ。

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 だけど、あの試合でアクシデントが襲う。6回裏2死、バッターは好調のソト。2球目の変化球をセンター返しした。強烈な打球だ。脚に当たって、上沢が転倒する。跳ね返ったボールをキャッチャー清水が拾って1塁へ送球する。だけど、両軍の選手も観客も試合どころじゃなかった。 

 上沢の様子が尋常じゃなかったのだ。身体を折り曲げ、左ヒザを押さえている。スローで確認すると打球は左ヒザを直撃していた。ベンチからトレーナーが飛び出した。チームメイトが心配そうに集まる。場内は騒然。

 上沢はそのままタンカで運び出され、救急車で病院に搬送された。直後、ハマスタにいる報道関係の知人からLINEに連絡が入った。

「上沢の状態、深刻です。ヒザの皿が割れて皮膚から飛び出ていたそうです」

上沢の戦列復帰はカンタンじゃない

 あ、念のために言っておくけど、僕はソト選手にもベイスターズにも何の含みもない。あの後、上沢を心配してくれるベイスターズファンのSNSの書き込みも沢山目にした。さすがにあれは不可抗力だ。何より上沢直之自身がツイッターで後日、「今回のことはプレー中に起きたことですし、ピッチャーをやっている以上仕方のないことだと思います。ソト選手の打球は速すぎて見えませんでした笑」「それはソト選手が素晴らしい打者であると同時にそのような打者と対戦できることはピッチャーとして幸せです!」とむしろソトを気遣ったことでもわかる。

 上沢直之は診断の結果「左膝蓋骨骨折」であった。馬鹿だと思われるだろうが、僕はソッコー、地元浅草寺の観音様にお詣りした。上沢、不運すぎる。本物のエースに成長するシーズンだったのに……。2016年は日本一の輪にヒジの手術で加われなかったのに……。

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