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2020/11/13

 しかし意を決して飛び込んだオートレースの世界でも、決して好感を持って迎え入れられたわけではない。オートレースに詳しいライターが当時の厳しい“空気"を振り返る。

「そりゃあ、オートレースの運営サイドからすればビッグニュースだし、注目されて嬉しい、という感じでした。でもレーサーたちにしたら『面倒くさいヤツが入ってきたな』という雰囲気。自分たちの利益になるわけじゃないですからね。森の出場するレースにだけ若い女性ファンが詰めかけることもあって、嫉妬というかやっかみの視線で見られていたと思いますよ」

1997年7月6日、オートレースデビュー戦で優勝した森且行 ©文藝春秋

 芸能界からも、オートレース界からも冷たい視線を浴びながらの再スタートだった。それを覆したのは、シンプルな努力の積み重ねだったという。

「いざスタートすると、その熱心さで周囲も認めていくようになりました。練習の時間も長いし、バイクの整備も自分が納得するまでとことんやる。何より、元SMAPであるというスター然としたところを全く出さないんですよね。本気でレースがやりたくて来たんだな、仲間だなと周囲に認められていきました」(前出・オートレースライター)

SMAP時代から「レース」への関心は人一倍

 前出のスポーツ紙記者も、森がオートレース界に受け入れられていくのを見ながらSMAP時代のエピソードを思い出していた。

木村拓哉 ©文藝春秋

「オートレース転向を発表する2カ月くらい前でしょうか、森さんがラジオでJRAの騎手と対談したことがありました。そのときの森さんはこちらが驚くくらい真剣で、最初は仕事へのプロ意識かなと思ったのですが、あれは『レース』を仕事にする人への興味が溢れていたんでしょうね。しかも森さんのお父さんが熱心なオートレースファンだというのも後から知りました。小さい頃からレース場によく行っていたと聞き、その頃からの夢を叶えたんだなと感じました」

 晴れてオートレーサーになった森は、1997年7月6日のデビュー戦で優勝する。会場の川口オートレース場には普段の倍以上となる3万5000人のファンが押し寄せ、森の単勝車券を買うために窓口には大行列ができた。女性の観客も普段の10倍近かった。

オートレース公式サイトより

 しかし周囲に強い印象を与えたのは、騒然とした空気の中でも決して綻びない森の謙虚さだった。