「優勝会見には、その日オートレースを初めて見たような記者も少なくありませんでした。彼らからはSMAP関連の質問も飛びましたが、森さんはあくまでも1人の新人オートレーサーとして夢を語った。スポットライトは人の感覚をおかしくすると言いますが、森さんは本当に地道な感覚を持っている」(前出・オートレースライター)
1998年には新人王決定戦で優勝、2000年にS級昇格、2003年にGII若獅子杯でグレードレース初優勝。その頃にはオートレース界でも1人のレーサーとして完全に認められるようになっていた。
「2007年に、オートレースのイメージキャラクターに選ばれたのは象徴的な出来事だったと思います。それまでもCM出演などはありましたが、あくまでも外部の企業に依頼されたもの。オートレース運営としても森さんの知名度は大いに利用したかったはずですが、他の選手などへの配慮も含めて、誰もが認めるトップ選手になるまではイメージキャラクターに起用しなかった。環境が整ったのが2007年だったということでしょう」(前出・オートレースライター)
優勝は運、そこにいたことは実力
2020年、森は46歳になっていた。デビューから実に23年。オートレースは40歳代の選手も多いが、ベテランの域に入っているのは紛れもない事実だ。日本選手権でも、優勝候補とは言いがたい立ち位置でのレースだった。
「優勝候補の筆頭だったレーサーが転倒するという“運"はありました。でも、その運を掴める場所にいたことは森さんの実力。優勝者を決めるレースの8人に残るだけでも難しいし、その中でチャンスをモノにするのはさらに難しい。優勝後に同期の選手たちが自分のことのように喜んでいたのを見ると、いかに周囲に愛されていたかもわかる。46歳での初優勝は、これまでの努力のご褒美でしょうね。このレースのためにギリギリまでスタートの工夫を用意していましたし、怠りなく努力してきた証だと思います」(同前)
SMAPという将来を約束された場所を抜け出し、夢を追い続けてきた時間へのプレゼント。森の日本選手権優勝は多くの人の心に残るレースになった。