逮捕されたのは、飲食店従業員などの17~19歳の3人の少年で、うち1人は高校生。車内に残されていた現金は400万円だけだった。
今回、被害に遭った里美は2008年12月にAV女優としてデビューして人気を集め、その後はテレビのバラエティー番組などにも出演。セクシー女優として芸能活動を続けている。事件後、各報道機関の取材に対して、「何も疑わずにドアを開けてしまった。怖かった」と振り返っていたが、「(強盗グループは)お金があるという情報をもとに襲撃したようだ」とも打ち明けている。
里美については、高額の現金を所持していることを窺わせる出来事もあった。2014年6月、東京国税局から約2億5000万円の所得隠しを指摘され、約1億7000万円の追徴課税を支払ったことがあった。こうした情報と里美が都心の人気エリアのタワーマンションに住んでいるといった情報が突き合わされ、「カネがあるはず」となった可能性もある。
前出の警察当局の幹部は、「逮捕されたのは実行役に過ぎず、背後に指示役がいるはずだ」と語る。
「数時間後に身柄を押さえられたのに車内に残されたのが400万円で、残りの200万円は不明というところがポイント。背後に半グレグループに所属している指示役がいて、その200万円が渡っている可能性が高い。被害者の金銭状況や住所などの情報を入手した人物が、実行犯を募集してやらせたと考えられる」
資産状況を確認するアポ電強盗
凶悪化する半グレの犯罪グループによる資金獲得活動。その事実を、警察当局も明確に意識せざるを得ない事件が発覚したのは、2019年2月のことだった。
東京・江東区のマンションで、一人暮らしの女性(80)が自宅に押し入ってきた男3人に口や手足を粘着テープで縛られたうえ、室内を物色されるといった凶悪な事件が発生した。女性はその後死亡した。死因は窒息死だった。
事件では、20代の男3人が強盗殺人容疑などで逮捕された。この事件も警察当局は、半グレグループが関与したとみている。
事件前には資産状況などを聞き出そうとする電話が被害者宅に入っていた。同様の手口の事件は渋谷区などでも発生し、いずれも事前にアポイントメントの電話があったことから、「アポ電強盗」と呼ばれた。
これまでの特殊詐欺では、虚偽の話を信じ込ませて被害者に現金を用意させて「受け子」と呼ばれる受け取り役がだまし取る手口が横行していた。しかし、アポ電強盗は詐欺の口実などを考える必要がなく手っ取り早くカネを奪うのが特徴で、特殊詐欺が凶悪化、短絡化した手口ともされていた。
「詐欺の後に強盗」という二重の被害が発生したケースもあった。
今年4月、都内の80代の女性宅に2人組の男が侵入し就寝中の女性の口を押さえ金品を奪おうとしたが、女性が抵抗したために何も取らずに逃走した事件が発生した。女性は同年3月に甥を装った男の特殊詐欺の電話を信じて300万円をだまし取られる被害に遭ったばかりだった。犯罪グループの間で「あの家にはカネがある」といった情報が出回っていることが疑われた。
実際に、別の強盗事件で逮捕された男が、「(詐欺被害に遭った女性が住む)あの家には1000万円あり、あと700万円が残っているはずという情報があった」と供述していたことが判明。半グレの間で高齢者の資産情報が流通していることが裏付けられることとなった。