一体、何のための「調整登板」なのか
7月12日オリックス戦、1回1/3、2被安打4失点(29球、2奪三振)
8月31日ソフトバンク戦、3回1/3、3被安打4失点(64球、4奪三振)
9月12日楽天戦、5回2/3、1被安打無失点(78球、4奪三振)
今季、大谷の投手成績は上記の通りだ。1勝2敗。MLBスカウトらがなぜ2軍でやらせないと首をひねるなか、敢えてOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)状態で、1軍の調整登板が続けられている。これは現場はどういう空気なのかなと思うのだ。『桐島、部活やめるってよ』ならぬ「大谷、投げるってよ」の現場は。まぁ、人気があって力量があって人柄もバツグンの大谷だ。嫌われることだけはないと思う。
が、とにかく周囲としてはバタバタせざるを得ない。これはプロ野球の形をした「調整登板」というビミョーに野球と違うものなのだ。ま、OJTだ。ファンは純粋に「大谷翔平vs相手打線」を楽しむわけじゃない。「大谷の状態」を見るというような興行形態だ。あるいは品評会として「大谷の状態を見るMLBスカウトを見る」というメタな領域まで行ってるかもしれない。もちろん大谷の力量は傑出していて、「1個1個のボールで抑えていったという感じ」「ピッチングというにはほど遠いかなという内容」(大谷のコメントより)でも、2位争い渦中の楽天打線を沈黙させてしまう。文春野球コラム楽天担当、かみじょうたけしさん、どうでしょう? 納得いかないよね?
楽天21回戦の今季初勝利の後、『ファイターズナイター』(HBCラジオ)のなかで解説者の新谷博さんが面白いことを言っていた。中継自体は終わって、その余韻のなかで話してたから、もしかすると厳密には情報番組『ファイターズDEナイト!!』の枠かもしれない。「ピッチングがどうだったかということより、そもそもの部分がわからない」と言うのだ。曰く「160キロの球があれば少々、出来が悪くても抑えられる。それよりもそもそも何で今、投げるのか。調整登板っていうけど、何のために調整してるの? 来季のためというんなら春から調整すれば十分でしょ。誰のために何の調整をしてるの? 答えは大リーグのためでしょ。それ以外に考えられない」。僕は、おお、新谷さん言ったなぁと感心していた。空気に配慮して皆、ハッキリ言わない。
毎日・スポニチ報道は当日のうちに共同通信が追いかけた。共同が打ったことで無視するわけにもいかなくなり、翌日は他紙やNHKが追いかける。僕が本当にスクープだろうかと首をひねった「今オフ挑戦」「移籍決断」はこうして「移籍濃厚」くらいのところで既成事実化していったのだ。但し、本人はコメントしていない。
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