“中の人”が1人だけだと俺様化し始める
「1人の“中の人”が運用すると、意思決定と実行がその社員に集中してしまうので、第三者のチェックが入りにくくなります。また、その都度タイムリーな発信を求められるTwitterでは、いちいち上司に伺いを立てていると、その間に投稿の鮮度が著しく落ちてしまう。それを避けるために担当者の独断で投稿する場面が多くなります。
さらに、“中の人”の個性でファンが増えていくと、知らず知らずのうちに担当者が『俺様化』し始めます。もちろん、すべての“中の人”がそうなるわけではありませんが、独善的になり、周囲の意見を受け入れなくなる傾向にあるのです」
過度の数値目標が炎上リスクを高める
俺様化しないためにはどうすればいいのか。中村氏は「『自分の感覚は世間の感覚とズレているのではないか』と客観視することが必要」と話す。
「特定の職業や業界に長く身を置いていると、その集団の常識が世間でも通用するものだと思いがちです。よく言われることですが、『〇〇の常識は世間の非常識』ということを意識する必要があります。自分の感覚は世間の感覚とズレていないか、世間の非常識になっているのではないか。その可能性を想像できるかどうかが炎上回避の第一歩だといえます」
そのうえで「数値目標に踊らされず、地道に継続すること」が大切だという。
企業の公式アカウントの場合、1日あたりの投稿数やフォロワー数の増加、エンゲージメント率(いいね、シェア、クリックなど、投稿に反応したユーザーの割合)などの数値目標が設定され、その達成を義務づけているところが多い。そうなると、先鋭的すぎる投稿でバズることを狙うようになり、結果的に炎上リスクが高まるのだという。
「数値目標が義務づけられると、“中の人”もアカウントの運用を苦痛に感じるようになるでしょう。投稿も共感を得られるようなものでなくなるかもしれません。
そうならないためには、Twitterをマーケティングのツールとして使うという意識からいったん離れ、過度の数値目標を設定せずユーザーと良好なコミュニケーションを図ることに専念する。それによりファンを増やす運用を行うのが良策だと思います」
世間の感覚とズレて俺様化しない。過度な数値目標に踊らされない。これらは公式アカウントを運用する“中の人”が炎上を避けるためだけじゃなく、多くの人にも当てはまりそうな教訓だ。とくに上司世代は肝に銘じておくべきかもしれない。