「本件で有罪と主張する理由は…」起こった超異例の展開
「弁護人は弁論を朗読したいと事前に伺ってますけど……」(裁判長)
と、被害者の意見陳述ですら書面での提出だった弁護人が、弁論を朗読するという超異例の展開。弁護人はゆっくり立ち上がって話し始めました。
「本件で有罪と主張する理由は3点ありまして、それは控訴答弁書に書いたとおりであります。一審無罪だったのを有罪と認めることにつきましては、群馬県の弁護士会から弁護士の倫理に反するのではないかという意見もあり、日本弁護士会からはペーパーでですね、被告人の意思確認をするようにと連絡がありました。こちらとしましては……Aさんに相当な意思確認をしております。被告人が現在おります福祉施設で面会を致しました」
そういう施設にいて、体調も思わしくないというのもあってか、本日は不出廷なんですね。そして、弁護人は、前橋地裁の時と別の弁護人だそうで、何故今回弁護をするようになったのかという経緯が述べられました。弁護士は続けます。
「Aさんとは40年前からの知り合いでした。共通の知り合いの国会議員がおりまして、当時選挙になると工場経営をしていたAさんが選挙事務所に顔を出していて、私がAという名前を憶えていた次第です。Aさんは当時ヒゲを生やして特徴的だったので記憶に残っています。それ以降付き合いはなかったのですが、平成16年に損保会社でAさん相手に担当したことがあり、その時にも少し話したこともあります」
と、親密ではないけれど、古くからの知り合いで弁護するようになった様子。そして、意思確認に関して弁護士はこう話しました。
「Aさんと40年前の話をしたら、私が憶えていない、忘れていた人の名前も記憶していて、耳が遠くて補聴器を使っているんですが……その補聴器のせいで中断しただけで、スムーズに会話もできています。
Aさんは、事故を起こし、高校生を死亡、負傷させたことを認識し、罪を認め、有罪を覚悟しています。Aさんは昭和7年生まれ、現在88歳という年齢で、人生の最後を迎えるにあたり、責任を認め、罪を償い、人生を閉じたいと考えているのです。Aさんが有罪を認めているのは明らかであります。本件に至りましては、有罪判決を賜りたく、よろしくお願い致します」
と、有罪判決を求める珍しい弁論。その朗読を終えると、
「では、次回判決は11月25日の午前11時。同じ102号法廷で行います」
と、裁判長の声がかかり、閉廷となりました。