コロナは受験生の心境にも変化をもたらしたといわれている。来年の大学入試では、知名度の高いブランド大学ではなく、自分のレベルに合ったそこそこの大学を目指したり、地元から近い大学を目指したりする受験生が増加するとも予想されている。
しかし、良い悪いは別にして、世の中には「学歴という物差し」で他人を測る人がまだまだ多いのも事実。就職活動では学歴フィルターでふるいにかけられ、会社に入れば嫌な上司から「これだから三流大学出身者は」などとパワハラを受けることもある。
こうした“学歴マウント”は、会社内、取引先との商談の場、そして女子会と、あらゆるシーンに存在する。さまざまな人の声を集めて学歴マウントの実態を探ってみた。
(取材・文=押尾ダン/清談社)
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Fランを「頭の悪い大学」とバカにする上司
最初に会社内のケースから紹介しよう。大手金融機関に勤務するAさん(31歳、男性)は、いわゆるFラン大学の出身だ。しかし、就活では運良く役員面接を突破し、入社後は抜群の営業成績によって出世街道をひた走っている。
「でも、結果を出す前の若手時代は地獄でした。1年目の研修期間からして、学歴マウントの取り合いです。まだ実績のない新人同士なので、出身大学の偏差値で優劣を競い合うほかないんですよ。周りは慶応、早稲田出身の優秀なやつばかりなので、Fラン出身の私は『お前、入る会社間違えたんじゃないの』とさんざんバカにされました。
支店に配属されると、今度は出身大学を標的にした上司のいじめです。新人だから成績は上がらないですよね? そうしたら、ほぼ毎日『頭の悪い大学出たやつはホントに使えねえな』と罵倒されました。じつは支店長や課長も有名大学出身ではないんですが、私の母校よりははるかにマシなので、ここぞとばかりにマウント取ってきて……」(Aさん)
関西地方の旅行代理店で窓口業務を担当するBさん(28歳、女性)は、高卒という理由から会社の上司のみならず、窓口で客からもバカにされることがあるという。
「お客様が『東京まで予算5000円で行きたい』などと無理難題を吹っかけてくることがあるんです。さすがにそれは難しいと伝えると、『大卒の俺がそう言っているのに、高卒のお前が否定するのか!』と逆ギレ。私が日本の地理を知らないと本気で思っているみたいで、『きみは滋賀県の場所わかるの?』などと言われることも日常茶飯事です。
なぜお客様が私の個人情報を知っているのかというと、直属の男性上司がわざわざ『あの子、高卒なんですよ』とお得意様に触れ回っているためです。その上司は大阪大学経済学部という、けっこう偏差値の高い国立大の出身なんですけど、それを非常に鼻にかけていて、何かにつけて高卒の私をバカにしてくるんです」(Bさん)