何年か経って読み返してみたら「あれ? これ私のことじゃん」
――確かに、実体験だとブレーキがかかることもありそうです。
野原 そうなんです。それに関して編集さんに話したら、描くことで人生が変わることもあるし、家族も変わることがあるから、セミフィクションですすめましょうとなったんです。
だから、『離婚してもいいですか?』は、全部フィクションのつもりで描きました。だけど、何年か経って読み返してみたら、「あれ? これ私のことじゃん」と気づいたり……。
ただ、最初から自分のこととして描いていたら、「なんで描いちゃったんだ」と大後悔していたとは思います。踏み込んで描ける人と描けない人がいて、私は描けないタイプだということが、その時よく分かりました。
――いま、コミックエッセイにはどちらのタイプの作品もあって、両方、読めるのがいいなと私は思います。
野原 少し前でしたら、事実じゃないことをコミックエッセイに描くのはどうなの? という声があったと思います。私もその頃はエゴサーチをしていて、モヤモヤしていたんですけど、今は世の中的に、(セミフィクションを)受け入れてくれる人が増えてきたのかなと思います。
でも、私の本ってコミックエッセイの棚に置いてないんですよね。そもそも、本屋さんに置いていないことが多くて。みんなネットで買っているみたいですね。そんなに買いにくいのかーと思って。
――めちゃくちゃ置いてますよ! 近所のTSUTAYAはコミックエッセイの棚が広くて、『消えたママ友』はそこで買いました。ミステリー要素があって、面白いですよね。
野原 あれも、最後の最後まで迷いながら描いていて。編集さんと相談しながら、まとめることができました。
――多くの人が抱えているモヤモヤを可視化するのにコミックエッセイって向いていると思うんですけど、まさに「モヤモヤの正体はこれだ!」という内容でした。
野原 編集さんと「モヤモヤしたものを作ろう!」ということで始まった作品なので嬉しいです。
――しかし、人生の端々でモヤモヤって立ち上がってきますよね。親がもういい年なんですけど、70代には70代のモヤモヤがあるみたいです。人生劇場ですよね。
野原 私も70代の方からお手紙をいただいたりするんです。いろいろネタはあるかもしれないですね。
――ぜひ読んでみたいです! それでは最後に一言お願いします。
野原 普段は気が付かない相手の気持ちを、この作品で、ちょっと覗いてみてもらえたら嬉しいです。