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「まるで我が家」「夫/妻がヒドい」…SNS騒然『妻が口をきいてくれません』作者が明かした''登場人物に思うこと”

野原広子さんインタビュー #1

2020/11/26
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 妻の美咲が口をきいてくれなくなって3日。平静を装いつつ会社に通い続ける夫の誠だが、理由もわからないまま月日は流れ……。

 集英社のノンフィクション編集部サイト「よみタイ」で最新話が更新されるたび、「うちの家庭を覗かれているみたい」とネットを騒然とさせたコミックエッセイ『妻が口をきいてくれません』が11月26日に発売された。そこで、著者の野原広子さんに、連載の経緯や40歳を過ぎてデビューすることのメリットなど前後編に渡って話を聞いた。(全2回の1回目/第2回を読む)

『妻が口をきいてくれません』(集英社)より

謎ときから始まった『妻が口をきいてくれません』

――『妻が口をきいてくれません』おもしろかったです! 夫視点と妻視点の2部構成になっていて、両者のリアルな感情の変化もさることながら、夫パートの伏線が妻パートで次々に回収されていくのが気持ちよくて。終盤の展開にも驚かされました。全体の流れや最終回を決めて始められたんですか?

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野原 この作品、謎解きとして始めたんです。というのも、「何年も前から妻が口をきいてくれないんだ~」と言っている知人がいて。ついに「離婚しよう」と切り出したら、奥さんに「イヤだ」「別れたくない」と言われたそうなんです。ずっと口をきいていないのにどうゆうこと?と。描いていくうちに、「こういうことだったのかな」と理由が見えてきて、最後まで描くことができました。

妻が口をきいてくれません』(集英社)

――誠が離婚を切り出したとき、美咲の口から出た気持ちとは裏腹のセリフ! あのシーンはインパクトがありました。そこにご自身なりの考察が入っているんですね。

野原 色々本も読みました。夫側に関しては、ネットで検索すると、「妻が口をきいてくれない」という悩みが結構出てくるんです。悩みは深いけれど、表面上はそう見えなくて、淡々と日常を過ごしているんだろうなぁという部分も埋め込んでみました。

――SNSでは、女性読者の「美咲の気持ちがわかりすぎる」「自分の父と母がそうだった」といった意見が目につきました。

野原 エゴサーチはしないんですけど、女性陣が深く、真剣に怒っている空気感は伝わってきています。

『妻が口をきいてくれません』(集英社)より

――妻パートになって初めて、事の起こりは5年以上前だったことが明らかになります。誠の行動ひとつひとつがあるあるの宝庫で、男性読者はかなりヒヤヒヤしたんじゃないかと思うのですが。

野原 そうですね。私が幼かったころ両親がケンカして、母が「子供たちが大きくなったら離婚してやる!」と言ったことがあるんです。それを思い出しながらエピソードに入れてみたんですけど、どの立場でも皆さん経験があることかもしれないですね。