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同じ空間にいるはずなのに、この2人はどこに居るんだ?

――ガス抜きということでしょうか。

野原 じゃあ、夫はどうすればいいんだ?という話ですが、取材中に「今は奥さんより、アイドルに夢中で」とか、「別のことに走ろうと思ってるんだー」という旦那さんが結構いて。不和を解消するため時間を割くのではなく、別のことにシフトするのが利口な解決法なのか……。妻は家に居て、延々怒っているわけですから。

「同じ空間にいるはずなのに、どこに居るんだ、この2人は?」と思ったのがきっかけで、今回、夫パートと妻パートの2つに分けたんです。

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――なるほどですね。アイドルにしろ、なんにしろ、男性の方が外に目を向けている人の割合が多い気はします。それは、経済を握っている側の強さでもありますよね。誠がCDを大人買いする一方で、美咲が毛玉だらけのセーターを着ているのを見て、「美咲ちゃーん!」ってなりました。

野原 不憫ですよね。がんばってほしい!

『妻が口をきいてくれません』(集英社)より

――ちなみに、最後にすごいシーンがあるじゃないですか。あのシーンは何から着想したんですか?

野原 『探偵!ナイトスクープ』って番組があるじゃないですか。過去に、「23年間会話のない夫婦」って回があったんですけれど。

――覚えてます! 探偵と子供たちが、2人が会話するのを離れた場所から見守って。

野原 覚えてます? あの旦那さん、拗ねてただけで、奥さんのことが好きだったんですよね。それがすごく印象に残っていて。

 私には妹がいるんですけど、彼女が結婚するとき、母に「もうみんな大人になったから離婚するの?」って聞いたんです。そうしたら父が、「そんなことないよな⁉︎」って冗談半分なんですけど泣いたんです。その時、母は何も言わなかったし、私も何も聞かなかったんですけど、その後も離婚しなかったところをみると、「お母さんは嬉しかったのかな」と。それを思い出しながら描きました。

――おぉ! やっぱりリアルな話はすごいですね。

野原 ですよね。それこそ皆さん、いっぱいネタを提供してくれますし。ただ、夫婦のどちらかが口を聞いてくれないという話に関しては、解決した人は教えてくれますけど、渦中の人は教えてくれないですね。そりゃそうなんですけど。

 最初の知人の話もまさか!でした。あなたたち、手を繋いで仲良さそうに歩いていたよね?って。夫婦って、本当にわからないですね。

【続きを読む】「子育て中は『クレしん』しか読めなかった」…『妻が口をきいてくれません』作者がコミックエッセイを描く理由

妻が口をきいてくれません

野原 広子

集英社

2020年11月26日 発売