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汚染の実態を発表したらパニックになる

 シェルターの床のあちこちに粘着テープが貼られ、特別製の空気清浄機がフル稼働していた光景を思い出した。あちこちに線量を表示する黄色いプレートはあっても、汚染度はどこにも表示されていなかった。しかし、現場からシェルターに戻ると、内部と外部を繫ぐエリアでタイベックや手袋などを脱ぎ捨て、係員によってサーベイを受ける。汚染がひどければ、シェルターの内部には入れないし、Jヴィレッジに戻ってからも再びサーベイをして汚染を測っているのだから問題ないはずだ。

 そう伝えると業者はため息をついた。

「でも、あんなのでいいの? 形だけじゃないんですか? ってのがぶっちゃけのところです。オーダーが高すぎるんですよ。汚染しているのに見てみないふりをしている。普段、あれだけやかましく汚染のことを言ってたくせに、東電は意図的に線量だけを強調して、汚染に関してはまったく触れようとしないし、マスコミもそれを報道しない。マスコミが無知なのはあると思います。けど、ちょっと調べれば分かるでしょ。だから意図的なのかもしれない……業者はみんなそう感じてます。なぜって、汚染の実態を洗いざらい発表したらパニックになるからです。地域の人らは、たぶん、メディアからの情報しか知らないじゃないですか。で、知識もない。テレビで評論家が言ってるのをみて、それを信じるだけで、あとはわかんないですからね、実際のことは。

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©iStock.com

 簡単に言いますね。みんなシーベルトに気を取られ過ぎです。何でもシーベルトで考えるから騙されるんです。いまこの部屋(いわき市内のホテル)がどのくらい汚染されてるか測ると、80~120くらいがマックスになります。自然放射能です。それが普通なんですよ。たとえば東京で測ればそのくらいのオーダーなんです。じゃあJヴィレッジで測っているオーダーはいくつか……目盛りが1・5を示していても、150じゃないんです。実際はその10倍。1500カウントです。ゲージが振り切れすぎちゃうんで、いつものやり方では測れない。

 それでいいの? ってのはそこなんです。10キロで測っているっていうのは伏せるんじゃないですか。レンジ……つまみを回したりボタンを操作すれば、いろいろ単位を変えられるから、すっごく汚染してても少ししか針が振れないようにできるんです。おまけに音がなかったですよね。あれ、消せるんです。普通は警告音を出しながら測る。正しいサーベイのやり方はピピピピーって音が鳴ったら、目盛りに視線を移し、針を見ながらその場所を重点的に測る。だけど音を消してるから分からない。極端に言ったら、Jヴィレッジのサーベイなんて測ってるフリしてるんです。だって、手元を見ながら同時に針をチェックするなんて無理ですから。これ、いくら言っても、どこも報道してくれない。大事なことなのに……」