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『ヤクザと原発 福島第一潜入記』#13

2020/11/15

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 読書

 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めた。7月中旬、1Fに勤務した様子を『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文春文庫)より、一部を転載する。(全2回の1回目/後編に続く)

任侠界から来た男

 Jヴィレッジやシェルターでも、刺青を入れている人間をよく見かけたが、堅気の一般人もかなりいた。刺青や小指の欠損はヤクザの象徴であっても、それだけで暴力団と断定するのは乱暴だ。その反対に、外見上、ヤクザとしての記号を持たない組員・幹部もたくさんいる。また虎の威を借りて周囲を恫喝するため、ヤクザを自称する似非(えせ)組員も多く、「俺はヤクザだ」という自己申告も鵜呑みにできない。1度だけ、過去に取材した指定暴力団員と出会った。

「あんた、『実話時代』の人じゃないの?」

「昔の話ですよ」

「俺、昔グラビア載ったんだよ。親分の後ろにちいちゃく、だけど」

 話を聞くと、その取材をしたのは私だった。かつてある指定団体に所属しており、10年ほど前に破門となったという。

「ヤクザなんて汚い世界だ。嫌になっちゃってよ。辞めたんだよ」

 彼とはその後、何度か飲みに行った。ヤクザを辞めたとは言いながら、らしい匂いが残っていたからだ。完全な形でヤクザと決別した人間は、顔つきがすっかり変わってしまう。ここまで残留濃度が高い人間は、なにかしらの形で暴力団と繋がっている――1例を挙げれば企業舎弟やフロント企業である可能性が高い。

©iStock.com

暴力団社会に繋がる蜘蛛の糸

「ほんとに辞めたんですか?」

「真面目にやったって無駄だし、喧嘩したら叱られるし、今のヤクザは馬鹿らしい」

 嘘をついているようには見えなかった。

「全然交流ないんですか?」

「なんて言うか……あのさぁ、鈴木さん、なんで原発で働いてんの?」

 話をはぐらかされても、ゆっくり戻した。2度目、3度目、回を重ねるごとに打ち解けた。

 放射能まみれの1Fから、暴力団社会に繋がる蜘蛛(くも)の糸……。

 組織→原発というルートを周辺取材で確認したうえ、原発→組織という逆方向のラインで裏付けが取れれば、確証を持って両者の関係性をクロと断定できる。ここまで来たら確たる証拠を見つけたい。

 蜘蛛の糸は切れなかった。