「海水が新型コロナウイルスで汚染された恐れがある。漁業や塩の生産を全面禁止せよ」

 韓国の情報機関である国家情報院(国情院)が11月27日に国会に報告した内容によれば、北朝鮮ではいま、金正恩委員長のこうした奇想天外ともいえるような指示が飛び交っているという。都市のロックダウンも連発され、11月1日には恵山(ヘサン)市、5日には羅先(ラソン)市、6日には南浦(ナムポ)、20日には平壌までが封鎖される事態になっている。

「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」…日に日に強まる北朝鮮のトーン

 封鎖されているのは「都市」だけではない。中国との国境についても、今年の1月から人の往来や物資の移動が厳しく制限される封鎖状態が続いている。

ADVERTISEMENT

 中国当局の発表では、10月の貿易総額は前年同月より99%減少したという。韓国国情院も、北朝鮮の極端な封鎖政策で対中貿易規模は今年1月~10月で5億3000万ドルと前年同期比4分の1に急減したとしている。

奇想天外なコロナ対策が次々繰り出される北朝鮮。何が起こっているのか… ©iStock.com

 2020年、北朝鮮市民は制裁の長期化と水害、新型コロナウイルスによる国境封鎖という「3重苦」に悩まされた。とりわけ国境が封鎖されたことで物資が滞り、北朝鮮市民は物価高騰で加速度的に厳しい状況に置かれている。

 中国への経済的依存度の高い北朝鮮国内では、物資が入ってこないことで食料品など生活必需品の価格は4倍に跳ね上がった。砂糖も年初の6000ウォンから2万7800ウォンに急騰し、ロックダウンされた国境周辺都市に至っては物価が10倍になったと報じられている。

 さらに、原材料設備の導入も止まった影響で、産業稼働率は金正恩政権での最低水準になっている。コメの生産量も今年は20万トン減少する見通しになっており、食糧不足に拍車がかかっている。

 北朝鮮ももはやこうした困難を隠そうとしない。経済的苦境を伝える北朝鮮国営メディアの表現も、「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」と、日に日に強くなっている。