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「国内にコロナ感染者は一人もいない」と語る北朝鮮だが…
元首相である朴鳳柱(パク・ボンジュ)をトップにした「国家超特級非常防疫委員会」を設置して極端な防疫措置を次々に導入し、「国内にコロナ感染者は一人もいない」と主張する北朝鮮だが、「防疫」の実態はかなり悲惨な状態であることが明らかになっている。
エイブラムス在韓米軍司令官は4月、新型コロナウイルス感染患者はいないという北朝鮮の主張に対し、「得られているすべての情報から考えて不可能な主張だ」と発言。筆者自身、7月中旬、北朝鮮の国境と平壌、元山(ウォンサン)、清津(チョンジン)などに電話取材した結果、平壌だけで300人が感染し5人が死亡(保健省集計とされる)、国境では地域によって「あそこは10人、こっちは15人」と次々と新型コロナウイルスによる死亡者が出ていることを確認した。
「韓国の感染による死者数」を大きく超える「北朝鮮の処刑人数」
深刻なのは感染による死者数だけではない。
北朝鮮防疫対策本部の資料によると、外国から帰国するにあたっては、平壌の東北部の衛星都市である平城の旅館や、平安南道の感染病予防院に隔離されることになっている。
問題は、この指示に違反するとどうなるのかである。
金委員長は4月3日に「防疫措置が長引いてだらける状況を防がなくてはいけない。誕生日パーティーや結婚式などの集会を開くことは、『敵と内通した』と考え、容赦なく処罰せよ」と述べ、防疫を損なった人を軍法で処理するよう指示。結果、処刑された人数が4月中旬の時点ですでに700人を超えた。韓国での新型コロナウイルス感染による死亡者数は526人(12月2日時点)。「防疫違反」によって北朝鮮で処刑された人数の方が多い計算になる。