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2016/04/09

genre : エンタメ, 読書

報われる瞬間

 ちょうど取材中、人文書の棚をしばらく眺めていた若い男性のお客様が、数冊を手に「ここ、いい本が揃ってますね」と少し弾むような声で言って、会計を済ませて帰った。レジ対応を終えた岩楯店長の「報われますね」という笑顔には、実感がこもっていた。

岩楯幸雄さん、『擬宝珠のある橋』とともに。

【本の話WEB読者にオススメ】

 そんな岩楯幸雄さんのオススメ本は、宇江佐真理さんの『擬宝珠のある橋』(文藝春秋)、心温まる時代小説「髪結い伊三次捕物余話」シリーズの最新刊。闘病の末昨年末亡くなった宇江佐真理さんは、岩楯店長とちょうど同世代で親近感を感じ、「髪結い伊三次捕物余話」シリーズを1作目から読んで最新刊まで到達した。朝の品出しが終わり比較的余裕のある時間帯は、レジ待ちの間、自分の楽しみに読書をする岩楯さん、生活と本とお店とが分かちがたく一体になっていて、それがお店に生きている。

 ご自宅が近くということでご縁があって、林真理子さんの著書を幸福書房で買うとサインがもらえる。会計を済ませてサインを依頼すると、お店で預かってマリコさん(岩楯店長は親しみを込めて「マリコさん」と呼ぶ)にサインをもらってくれるのだ。

【地元作家にサインがもらえる本屋】

 近隣の口コミから広がっていったのだが、数年前、マリコさんご本人のテレビ出演でサイン本の話をしたことがきっかけで、多くのファンが集まるようになった。新刊が出るたびに、遠くは大阪や岐阜、秋田などから来店してサインを依頼する熱心なファンがいる。今でも2週間に一度くらい、マリコさんから「サイン本できたよ」と電話が来て、段ボール1箱の新しい本を持っていって、サイン本を引き取ってくる。全国から集まるファンもすごいが、林真理子さんもサイン本の物量を考えると大変だ。

 林真理子さんといえば、「週刊文春」誌上で30年以上エッセイを連載し(第29弾として『マリコ、炎上』を刊行)、新刊小説を精力的に発表し続ける一方、直木賞選考委員も務める、いわば文壇の大御所である。その林さんがごく気さくにサインの要望に応えている。きっと、ご近所の素敵な本屋さん幸福書房が好きで、応援したいという気持ちから、このサイン本サービスを始めたのではないかと思う。その点においては、大変僭越ながら、マリコさんに完全に同意である。

全国からファンを引きつける林真理子コーナー。

幸福書房
住所 東京都渋谷区上原1-32-19
営業時間 8:00~23:00

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