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2020/12/10

一番アクセスが多かった記事は?

 健康食品のサイト運営で広告収入を得ていたアツェは「トランプのニュースが儲かる」と聞き、16年に政治サイトに乗り換えた。ニコラと同様に英語能力は低い。毎日8時間、パソコンの前に座り、ネットの翻訳機能を使って読んだ記事のコピーと貼り付けを繰り返した。複数のサイトを運営し、収入は本業の10倍、数千ドルに上ったという。

 記事には書かないのでサイトを見せてほしいと頼んだが、拒絶された。サイトにどんな内容の記事を掲載していたかも一切話そうとしない。

「アクセスの多かった記事を1つで良いから教えてくれ」と3度も4度も繰り返し求めると、あきれたような顔でやっと明かした。

「(独首相)メルケルはトランプに借金がある」

 意味を尋ねると、

「知るか。どこかで見つけた記事をコピーしただけだ」

「トランプネタはまだ稼げる」

 大統領選後に広告収入は大きく減ったものの、本業よりはなお多く、取材当時にアツェはまだ3つのサイトの運営を続けていた。

「(トランプ夫人)メラニアや(娘の)イバンカのゴシップとか、トランプネタはまだ稼げる」

©iStock.com

 2人の取材を終えた後、通訳兼案内人のウラジーミルが教えてくれた最も人気のあるというベレス発サイト、USA Politics Today のフェイスブックのページにはこんな見だしの記事が並んでいた。

「トランプ大統領の暗殺を計画した民主党議員2人逮捕」

「最高裁、オバマケアを憲法違反と宣言」

「(女優の)ニコール・キッドマン、トランプ氏は歴代最高の大統領と語る」

 クリックするといずれも広告が多く掲載されたサイトにつながる。私はウラジーミルにこのサイトの関係者に連絡を取れないかと尋ねた。すると大金を稼いで高級車を乗り回しているという「フィリップ」という名の男に何度か電話を掛けてくれたのだが、あいにく応答はなかった。

 それにしてもなぜベレスで偽政治ニュースサイトが広がったのだろう。

「トランプの勝利を助けた男」--こんな名刺を持つミルコ・チェセルコスキーという人物に取材3日目の朝に首都スコピエで会った。

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古川 英治

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2020年12月10日 発売

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