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 小説は読むのにある程度時間がかかって、若い人には特に「とっつきにくくて苦手」と言われることもある。映像表現も、観るにはある程度時間がかかるし、能動的に「観るぞ!」という気持ちをつくらないといけない。

 そこへいくと音楽は、流れていれば自然と耳に入ってくる。いちばん軽い気持ちで、構えずに触れられる表現なのでは? そこからまずは輪の中に足を踏み入れてくれたらうれしいんですよ。

ikura 音楽は生活の中にごく自然なかたちで存在していて、何か作業をしながらとか、歩きながらでも聴けますからね。ここを入口にして物語に迷い込んでもらって、そこから小説や映像、映画など無限に枝分かれしていく世界に、どんどん分け入ってもらえたらいいですね。

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ikuraさん

まもなく第6弾楽曲として『ハルカ』が公開

 12月18日には、第6弾楽曲として『ハルカ』が公開されることに。ここにも何か新しい試みが含まれている?

ikura 原作は脚本家・鈴木おさむさんによる小説「月王子」です。新しい点といえば……、今回はなんとマグカップが主人公ということになってます! 売れ残りだったマグカップが、自分を買ってくれた女の子の成長を見守っていくという……。

isotock.com ※写真はイメージ

Ayase かなり風変わりな物語だけど、共感ポイントはたくさんあるんじゃないかと。無機物のはずのただのカップから、親が子に注ぐ「無償の愛」みたいなものまで感じられる。

ikura そう、レコーディングのときは母性というか、慈しむような気持ちを大切にして歌いました。

 それに、つい思い入れたっぷりに歌いたくなる事情もあって。というのもわたしには、この物語に出てくる女の子、遥と似た体験があって。

 わたしはいまだに、幼稚園児のころ買ってもらったピンク色のプラスチックカップを、いつも使っているんです。あと、幼児向けの小さくて先がまるいフォークも、ずっと愛用してます。スパゲッティをそれで食べると、すごくおいしく感じるんですよね。

 遥の気持ちが痛いほどよくわかるぶん、かなり感情移入して歌うことができたと思います。