「小説を音楽にする」というコンセプトを掲げ、2019年11月『夜に駆ける』でデビューした、男女2人組の音楽ユニット、YOASOBI。
シングルCDはリリースされていないにもかかわらず、TikTokをきっかけに若者たちの間に広がり、12月4日に発表された「ビルボードジャパン 2020年イヤーエンド・チャート」では1位、音楽配信ストリーミングサービスの総再生数は、累計2億7000万という天文学的数字に達した。
以降『ハルジオン』、『群青』など、スピーディでポップな楽曲を連発し、原作小説集の刊行や、第4弾楽曲『たぶん』をもとにした実写映画公開が続くなど、人気はどこまでも伸びていく。ユニットのメンバーは、楽曲の作詞・作曲・アレンジを手がけるコンポーザーのAyaseさんと、ボーカルのikuraさん。あらゆるものごとが歩みを止めてしまうかに見えた2020年、日本の音楽シーンのひとすじの光明となったYOASOBIに、来し方行く末を聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)
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はじめは「チャレンジしてやろう!」という気持ちで
はじまりは、小説投稿サイト「monogatary.com」の運営スタッフが、投稿作品をもっと知ってもらうために思いついた方策が、小説を音楽と結びつけることだった。「小説を音楽にする」ことにチャレンジしようと決めたのだ。
相談が持ち込まれたのは、音声合成ソフトVOCALOIDで楽曲制作する「ボカロP」として広く活動していたAyaseさんだった。
最初に「小説を音楽にする」と言われたときは、意図をすんなり呑み込めたのだろうか?
Ayase 最初は「つまりは主題歌やテーマソングをつくるってことかな?」くらいに思っていたんですが、話を聞いてみるとどうやらそうじゃない。
小説としてすでにアウトプットされた表現を、いったん解体し、その要素を再構築して、音楽という別の表現に組み替え改めてアウトプットする……。
ずいぶん手の込んだことを考えているみたいで。そんなの聞いたことないし、うまくいくのか、どんな音楽に仕上げればいいのか、まったく想像がつきませんでした。でも、ともあれ面白そうではある。チャレンジしてやろう! という気持ちにすぐなりました。
最初に取り組む曲の原作には、monogatary.comの公募企画に投稿された小説「タナトスの誘惑」(星野舞夜・著)が選ばれた。
並行して、歌い手探しも進む。スタッフとAyaseさんは、シンガーソングライター「幾田りら」として活動し、歌声に透明感と親しみやすさを併せ持つikuraさんに白羽の矢を立てた。