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高額で転売する外国人観光客も

 日本の駄菓子は外国人にも人気で、成田空港まで京成線1本で行けるという立地条件も重なり、海外向けの需要があるようだ。特に欧米系の観光客はアニメの人気キャラクターが描かれたガムをスーツケース一杯に詰め込み、母国に帰って3~4倍の値段で売っているという。

 西日暮里在住で、玩具メーカーに勤める男性(48)は、かつて香港に赴任していた時にここで大量に駄菓子を買い、香港に持ち込んでいた。

「日本のお菓子は美味しいと評判なんです。駐在員や香港の人にも人気で、向こうで買うと高いので、日本でまとめ買いしていました。駄菓子ってやっぱり懐かしい感じがするじゃないですか。個人的にはうまい棒が好きですね」

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店の外には、うまい棒30本入りのパックが敷き詰められていた

 女性客の多くは子連れの母親だが、東日暮里在住の女性(39)は1人で立ち寄っていた。邦楽囃子の先生をしているといい、稽古をする子どもたちのために買いに来たという。

「コロナで中止になっていた稽古が、7カ月ぶりに再開することになりました。いつもはお菓子の袋を開けてそのままあげていましたが、このご時世なので、1つずつ梱包されている駄菓子をと思い、今日は1000円分買いました」

 

街の駄菓子屋は店を畳むか否かの瀬戸際

 大屋商店が取引している駄菓子屋は約20店舗。そのうちの1つで、墨田区にある「秋葉商店」の店主、秋葉明衣子さんはまだ22歳だ。夏に亡くなった祖母の後継ぎとして店に立ち、週1回、ここへ買い出しに来る。付き添いで来ていた父親の昌一さん(53)によると、この少子化の中、駄菓子屋を維持するのは難しいため、本当は店を畳もうと考えていた。ところが明衣子さんが「やるよ!」と言い出してくれたため、続けることにした。だが現実問題、駄菓子は利益率が2割程度と低いため、経営状態は厳しいという。明衣子さんが語った。

「どうにか赤字にはなっておらず、ぎりぎりセーフですね。でも私の給料はほとんどありません。『子供から消費税は取れない』という祖母の言葉を守っているので、店が負担しています。雨が降ると子供は来ないし、売り上げが数百円の時もありますね」

店頭に立つだけでなく、電話番もする律子さん

 街の駄菓子屋はみなこうして、後継者や経営上の問題から、店を畳むか否かの瀬戸際のところで、かろうじて維持している。このまま少子化が進めば、今以上に存続は厳しくなるのかもしれない。そんな中で、江戸時代から今も続く駄菓子屋が、池袋の境内にひっそり佇んでいた。そこの店主もまた、かつては風呂敷を背負って、日暮里の駄菓子問屋へ通っていたのだった。

 写真=水谷竹秀

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