黎明期は職人さんが木彫りで金型の原型を作っていたそうで、作り込みの魂みたいなものが見えてくるんです。中国製や現行のベトナム製も決して品質は悪くないし、実際多数所有している。でも、古い日本製にはなんとも言えない味があるんです。まず、置くだけでかっこいい。やっぱり、現行のものとはなにかが違う。なかなか、いい言葉が出てこないんですけど……。
ーーオーラみたいな。
あなんどいる そうかもしれないですね。僕らコレクターにもいろいろな方がいて、買ってすぐにしまう人もいるんですけど、僕は自分が欲しくて手に入れたものは飾るんです。古い日本製のものとか気に入っているものを飾って眺めるのが至福ですね。そういう瞬間を求めているのかもしれないです。
後でレア度が上がるトミカって?
ーーちょっとえげつない話なのですが、買っておくと後でレア度が上がるトミカの車種って教えてもらえますか。
あなんどいる ここ10年ぐらいで販売されたものでレアになってきているトミカの傾向といえば、発売当初はさほど人気がなかったものですかね。最近だと、恐竜を運んでいるトラックとか。当時、コレクターは見向きもしなかったのですが、廃盤になってから徐々に値段が上がっています。恐竜以外だと、動物を乗せるタイプのもの。昔あったものは、プレミアが付いています。
ーーなんだって恐竜を運ぶトラックを作ったのですかね。
あなんどいる 子供ウケを狙っているんやとは思うんですけどね。巨大なハンバーガーやフライドポテトを運んでいるトラックもあります。そういうのは、後から色を変えてマクドナルド限定商品になったりとか。企業とコラボして違うバリエーションが出たりするのもトミカの魅力やと思いますね。「これ、あの時のトミカか……伏線やったんやな!」って感激します。
馴染みのあるおもちゃ屋さんがくれたレアアイテム
ーー6,000台も持っていると、手に入れたときのエピソードにもいろいろなものがありそうですね。最も濃いエピソードを誇るトミカってありますか?
あなんどいる 一応、トミカはトミカなんですけど車じゃないんです。いかにも昭和な、昔ながらのおもちゃ屋さんに置かれていた、トミカを飾るケースって分かりますかね。120台入れられるケースで、小さいころから祖父に連れて行ってもらい、トミカを買ってもらっていた馴染みのあるおもちゃ屋さんで手に入れました。
たまたま高校生の時に覗いたら閉店すると聞かされたので、祖父にも「あそこ閉めるんやって」と話したら「挨拶にでも」ってなったんです。僕は一番下の孫なんですけど、一番上の孫が僕より15~16歳上で。何人もの孫をそのおもちゃ屋さんに連れていったという思い出があるので、お店に挨拶へ行ったんです。
「長いことありがとうね」って祖父が店主に花束を渡したら、あちらも「あれだけトミカ買ってくれて、ありがとうね。これで飾り」とケースをくれたんですよ。
何十年も店頭で使い続けていたから、後ろが焼けていたりとか、前がちょっと割れていたり、店主のおじいさんが番号を振った木の板を枠につけていたりして。そういう味が出ているのがたまらなくって、とにかく感激しましたね。