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【写真多数】「ベイブレードにも遊戯王にも浮気しなかった。トミカ一筋です」平成生まれのコレクターが語る魅力

トミカインタビュー#1

2020/12/18
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 黎明期は職人さんが木彫りで金型の原型を作っていたそうで、作り込みの魂みたいなものが見えてくるんです。中国製や現行のベトナム製も決して品質は悪くないし、実際多数所有している。でも、古い日本製にはなんとも言えない味があるんです。まず、置くだけでかっこいい。やっぱり、現行のものとはなにかが違う。なかなか、いい言葉が出てこないんですけど……。

ーーオーラみたいな。

あなんどいる そうかもしれないですね。僕らコレクターにもいろいろな方がいて、買ってすぐにしまう人もいるんですけど、僕は自分が欲しくて手に入れたものは飾るんです。古い日本製のものとか気に入っているものを飾って眺めるのが至福ですね。そういう瞬間を求めているのかもしれないです。

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後でレア度が上がるトミカって?

ーーちょっとえげつない話なのですが、買っておくと後でレア度が上がるトミカの車種って教えてもらえますか。

あなんどいる ここ10年ぐらいで販売されたものでレアになってきているトミカの傾向といえば、発売当初はさほど人気がなかったものですかね。最近だと、恐竜を運んでいるトラックとか。当時、コレクターは見向きもしなかったのですが、廃盤になってから徐々に値段が上がっています。恐竜以外だと、動物を乗せるタイプのもの。昔あったものは、プレミアが付いています。

ーーなんだって恐竜を運ぶトラックを作ったのですかね。

あなんどいる 子供ウケを狙っているんやとは思うんですけどね。巨大なハンバーガーやフライドポテトを運んでいるトラックもあります。そういうのは、後から色を変えてマクドナルド限定商品になったりとか。企業とコラボして違うバリエーションが出たりするのもトミカの魅力やと思いますね。「これ、あの時のトミカか……伏線やったんやな!」って感激します。

恐竜運搬トラック「子供の好きなものと好きなものを合体させてみようっていう発想で出したんでしょうね」(あなんどいる氏)
水族館トラック「ジンベイザメがガラス張りの荷台に! 実際の車ではちょっとあり得へんですね」(あなんどいる氏)
馬の運搬トラック「動物系で、馬を乗せるタイプですね。右は地元に現在もあるおもちゃ屋さんで、母親が『古いトミカないですかね』と尋ねたらレジの下の引き出しから出してくれたそうです。けっこうレアなうえに、そういう思い出もあります。左は海外だけで発売された輸出仕様で、数年前に大阪の某ミニカー専門店にて入手。こちらは中を覗くと乗っている馬が白馬です」(あなんどいる氏)

馴染みのあるおもちゃ屋さんがくれたレアアイテム

ーー6,000台も持っていると、手に入れたときのエピソードにもいろいろなものがありそうですね。最も濃いエピソードを誇るトミカってありますか?

あなんどいる 一応、トミカはトミカなんですけど車じゃないんです。いかにも昭和な、昔ながらのおもちゃ屋さんに置かれていた、トミカを飾るケースって分かりますかね。120台入れられるケースで、小さいころから祖父に連れて行ってもらい、トミカを買ってもらっていた馴染みのあるおもちゃ屋さんで手に入れました。

 たまたま高校生の時に覗いたら閉店すると聞かされたので、祖父にも「あそこ閉めるんやって」と話したら「挨拶にでも」ってなったんです。僕は一番下の孫なんですけど、一番上の孫が僕より15~16歳上で。何人もの孫をそのおもちゃ屋さんに連れていったという思い出があるので、お店に挨拶へ行ったんです。

「長いことありがとうね」って祖父が店主に花束を渡したら、あちらも「あれだけトミカ買ってくれて、ありがとうね。これで飾り」とケースをくれたんですよ。

トミカの店頭用ケース「僕が生まれた1994年10月当時のラインナップ・ディスプレイを再現して部屋に飾っています。ケースをくれたおもちゃ屋さんのおじいさんも私の祖父も亡くなってしまったので、思い出も一緒に飾っている感じです」(あなんどいる氏)

 何十年も店頭で使い続けていたから、後ろが焼けていたりとか、前がちょっと割れていたり、店主のおじいさんが番号を振った木の板を枠につけていたりして。そういう味が出ているのがたまらなくって、とにかく感激しましたね。