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「特殊作戦群」を生んだ元陸将が語る 未来兵器「レールガン」の開発事情

元陸将による軍事シミュレーション小説『オペレーション雷撃』著者インタビュー #2

2020/12/18

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 読書, 社会, 国際, テクノロジー

note

  海上自衛隊のイージス護衛艦に搭載した場合を考えてみましょう。現在、イージス護衛艦は、艦船や地上を攻撃するための艦載砲(127mm砲)に、対艦攻撃用のミサイル、対空ミサイル、弾道ミサイル攻撃用のSM-3など、多様な兵装を搭載していますが、レールガンなら艦載砲より遠くから攻撃が可能で、弾道ミサイル対処や自艦に対する対艦ミサイルの攻撃にも対応することができます。極超音速ミサイル、極超音速滑空兵器など、従来では撃墜不可能だったものにも対処できるようになるでしょう。

利点は、弾幕を張れる・連射が可能・弾体のコストが安い

 アメリカで研究中の極超音速実験機、ファルコンHTV2は、ロケットで打ち上げて大気圏外から大気圏内に上昇と下降を繰り返しながら滑空し極超音速を維持しながら、地球上のどの地点でも1時間以内に攻撃するというコンセプトの兵器ですが、ミサイルのように弾道飛行をしないので未来位置が予測しにくく、通常の迎撃ミサイルなどではほぼ迎撃できない。ところがレールガンで弾幕を張ることで効果的に迎撃できるようになります。

 また、現在の弾道ミサイル対処は、発射されたミサイルがもっとも速度を落とす、大気圏外の弾道軌道の頂点を狙って攻撃しますが、弾丸が極超音速で飛翔し、連射が可能なレールガンならば、高速度の高度でも迎撃可能となるでしょう。航空自衛隊の基地に配備すれば、弾道ミサイル対処も、より遠距離で安全に迎撃可能です。

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 理論的には極超音速の衝撃力が大きいので、弾丸を爆発させる必要がなく、ミサイルなどと比べて弾体のコストが安いのも利点です。コストが安ければ、それだけ大量に配備でき、また発射することができるわけです。

『オペレーション雷撃』に登場する、レールガンシステムのイメージ図。大電力確保のため小型の核融合炉が付属する。(画 吉原幹也)

各国レールガン研究の状況

――現在、どの程度までレールガン研究が進んでいるのでしょうか?

山下 各国の状況についてお話しすると、アメリカがもっとも進歩しているといわれています。BAEシステムズが中核となって開発が進められており、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦等の将来兵装として、現在、発射実験を行うところまで来ています。

 そのほか、ロシアや中国なども研究を進めているようです。中国では軍艦に搭載した画像が出回りましたが、アメリカの専門家によると実用化にはまだまだ時間がかかるようです。

 欧州ではEU各国が共同研究体制を構築しています。日本でも開発が進められていて、現在ではまだ小型の実験装置を使って発射テストを行っている段階ですが、着実に研究は進捗しています。