先日、若いお母さん方との話し合いの中で、「今、みなさんが食べている野菜には農薬が残留してるんですよ」と言ったところ、こう返された。「国が検査してるんだから問題ないんでしょ?」と。「食べて中毒を起こしたなんて聞いたことがないわ」とも言われた。
確かにそうだ。2008年に中国製毒ギョーザを食べて中毒を起こした事件はあったが、現実にはそんな事件はまず起こらない。
農薬の本当の怖さは「見えない毒性」にある
実は、農薬の本当の怖さは中毒なんかではなく、「見えない毒性」にあると言われている
日本で使われている農薬の出荷額でもっとも多いのが除草剤のクリホサートだが、その次が有機リン系農薬、そしてネオニコチノイド系農薬(ネオニコ)と続く。
有機リン系は80年代に登場した農薬で、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関係が問題になって各国が禁止したが、日本では今もよく使われている。ネオニコはその後に登場した最新の殺虫剤で、今ではお茶や果実をはじめ、ほとんどの野菜に使われ、検査すると必ず検出されるというポピュラーの農薬である。
ミツバチの大量死から明らかになった人間への毒性
この殺虫剤薬の特徴は、昆虫の中枢神経を狂わせて殺してしまう神経毒性にある。当初、昆虫には強く作用し、人間には毒性が低いので安全だと言われた。ところが、ミツバチの大量死に関係しているらしいと分かって注目が集まり、多くの人が研究を続けるうちに、ここ数年、人間にも毒性があることが明らかになってきたのだ。
脳から出た信号は、神経細胞の先端のシナプスでアセチルコリンに変換して放出し、その先のニコチン性アセチルコリン受容体にキャッチされると情報が伝わる仕組みになっている。この殺虫剤は、その受容体にくっついて神経を興奮状態にして殺すのである。
実はこの受容体、昆虫だけでなく人間はもちろん、ほとんどの生物に存在するのだ。ただ形が少しずつ違っているだけである。人間には、脳だけでなくあらゆる臓器に存在するから、もし少量でも人間の受容体にくっつくようなことがあれば大問題である。