昭和・平成・令和とすべての時代でチャート1位
結婚後は山下が竹内の作品を全面的にプロデュースしてきた。《彼にプロデュースしてもらうことで、書いた作品が私のイメージどおり、あるいはそれ以上になっていきます》とは、昨年、竹内がデビュー40周年を迎えた際のインタビューでの発言だ(※6)。同じインタビューの終わりには次のようにも語っていた。
《私はとても細かく、いろいろとリクエストをすることが多いので、かなりうるさがられているかもしれませんけれど(笑)。でも、彼自身の作品ではやりそうもないアプローチをすることが、もしかすると、彼の音楽に役に立つこともあるんじゃないでしょうか。今でも、彼の時間を奪うことに申し訳なさは、ちょっと感じたりもしますね。達郎自身の音楽制作やライヴに使えるはずだった時間を私に分けてくれていることに、とても感謝しています》
一方、山下は2001年のインタビューで、日本の音楽界において女性のシンガーが結婚・出産後も現役を続けるのはけっして楽なことではなく、まして《シングルとかアルバムをチャートに入れる、1位を取るとかいう領域になると、実はまりや以外に芸能史ではほとんど例がない》と指摘したうえで、次のように述べている(※7)。
《このことは、芸能界といえども女性の抱える就労状況は(世間一般と)大して変わらなくて、女性が結婚して子供を持って仕事を継続することが、いかに困難であるかを示している。だからこそ我々スタッフは、セールスやチャートではなく、彼女が現役を継続していることに対して、大いなるプライドを感じてます》
昨年リリースの竹内の40周年記念アルバム『Turntable』は、CDが全体的に売れないなかにあって25万枚も売れた。昭和・平成・令和とすべての時代でチャート1位を取ったのは、女性アーティストでは彼女が初めてである。
※1 竹内まりや『Expressions』ライナーノーツ(MOON RECORDS、2008年)
※2 『週刊朝日』1993年12月24日号
※3 『文藝春秋』2019年4月号
※4 三浦武彦・早川和良『クリスマス・エクスプレスの頃』(日経BP企画、2009年)
※5 『週刊現代』2014年12月20日号
※6 『週刊朝日』2019年9月13日号
※7 『日経エンタテインメント!』2001年12月号