文春オンライン

クリスマスが今年もやって来る! 竹内まりや・山下達郎夫妻のクリスマスソングはなぜ心に残るのか

2020/12/17
note

「クリスマス・イブ」ブレイクのきっかけはJR東海

 その山下も不朽のクリスマスソングを残している。言うまでもなく、「クリスマス・イブ」だ。この曲は1983年6月、アルバム『MELODIES』の収録曲として発表された。

 山下はこれ以前、リゾートミュージックにニーズがあった時期に、『RIDE ON TIME』や『FOR YOU』といったアルバムをヒットさせており、むしろ夏のイメージが定着していた。しかし、やがて彼のなかで疑問が湧き、「このまま夏男で終わるのか、それは嫌だ」と、より内省的な世界を音楽で表現しようと思い立つ(※3)。ここから生まれたのが『MELODIES』であった。

1983年発売の『MELODIES』

「クリスマス・イブ」は曲が先にでき、《コード進行やメロディーの構造から「これはクリスマスかな」と思ってぱっとひらめいたのが「雨は夜更け過ぎに」という詞で、十五分ぐらいで書けちゃったんですよね》という(※3)。

ADVERTISEMENT

 同曲は当初より音楽ファンからの評価は高く、『MELODIES』発売から半年後の1983年12月にはシングルカットされた。リリース当時のシングルチャートでの最高順位は21位にとどまるも、5年後の1989年初めに15位まで上昇する。ブレイクのきっかけは、1988年のクリスマスシーズンにJR東海の新幹線のCMで使われたことだ。

「ホームタウン・エクスプレス X'mas編」と題するそのCMでは、当時15歳の深津絵里がクリスマスに駅のホームで彼氏を待つ少女を演じ、強い印象を残した。好評を受けて、JR東海は翌年以降も「クリスマス・エクスプレス」の名称でCMをシリーズ化し、牧瀬里穂や吉本多香美などが出演している。

1988年の「クリスマス・エクスプレス」CMに出演する15歳の深津絵里 YouTubeより
1989年の「クリスマス・エクスプレス」CMに出演する牧瀬里穂 YouTubeより

 このシリーズを手がけたCMディレクターの早川和良は、「ホームタウン・エクスプレス X'mas編」の絵コンテを描いている段階から、このCMを盛り上げる曲は「クリスマス・イブ」しかないと決め、コンテにもそう書き込んだ(※4)。

 早川によると、2年目にCMをつくるときには、別のクリスマスソングも考えようと、いろんな曲を聴いてみたが、《結局は「クリスマス・イブ」だねって継続が決まった》とか(※4)。同曲が初めてチャートで1位になったのもこの年、1989年12月だった。