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哀愁を感じさせるからこそ、引き込まれる

「クリスマス・エクスプレス」シリーズは1992年に一旦終了する。ちなみにこの年のCMには、駅の構内を走る吉本多香美が、ギターケースを持った帽子姿の男性とぶつかるカットが出てくるが、その男性を演じたのは誰あろう山下達郎本人だった(※5)。

「クリスマス・イブ」はその後も毎年シングルチャートのトップ100位以内に入り、2015年には30年連続となるランクインを達成。翌年3月、「日本のシングルチャートに連続でランクインした最多年数」としてギネス世界記録にも認定された。自身最大のヒットとなったこの曲について、山下は次のように評している。

『クリスマスイブ』は1983年11月にシングルカット

《「クリスマス・イブ」は結構よくできた曲だと思います。僕の音楽は総力戦で、作詞、作曲、編曲、演奏、歌唱、そして録音、それらの全てがうまく調和するのが理想です。必ずしもベストヒット=ベストソングではないミュージシャンも多い中で、自分で一番よくできたひとつが「クリスマス・イブ」で、それが最大のヒットでもあったというのは非常に幸せなことだと思います》(※3)

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 聴けばわかるように、この曲は失恋を歌ったもので、けっして幸せな内容ではない。前出の早川和良も、《ハッピーではなく、哀愁を感じさせる内容だからこそ、引き込まれました》という(※5)。

山下達郎 ©共同通信社

 考えてみれば、竹内まりやの「すてきなホリデイ」でも、冒頭に挙げたフレーズに続けて「悲しかった出来事を 消し去るように」と歌われている。コロナに振り回された今年は、とくにこの詞が心に沁み、祈りの言葉にも聞こえる。そこはかとなく感じさせる哀愁こそ、山下・竹内夫妻のクリスマスソングがそろってロングセラーとなった最大の理由なのかもしれない。

 山下と竹内が結婚したのは1982年。もともと同じレコード会社に所属し、契約関係や印税の問題について山下が竹内にアドバイスしたのが馴れ初めで、その後、彼女のレコーディングにもかかわるようになり仲良くなっていったという(※3)。