外事警察』などで知られる麻生幾さんが、“日本警察史上最大の作戦”に取材して社会の「光と闇」を問うた圧巻の警察小説、『観月 KANGETSU』が誕生した。

 大分県杵築市で毎年行われる幻想的な光に包まれる「観月祭」。今年も無事に迎えられるはずだった。しかし、祭りの1週間前、突如として七海を怪しい影が襲う。その翌日には七海が幼いころからお世話になっているパン屋の奥さんが絞殺体で発見された。さらには、この事件と時を同じくして東京で発見された首なし死体との関連が取りざたされ……。一見関係のない2つの事件は、やがて巨大な闇を暴き出し始める。

私が描こうとする「光と闇」がそこにあると確信

※写真はイメージ ©iStock.com

――この物語が生まれたきっかけ、大分県杵築市を舞台に選んだ理由を教えてください。

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 これまでハードな小説を多く書いてきましたが、今回は昔からずっと想いの底にあった「絵画的」な小説にしたかったのです。そのときに思い浮かんだのが、小さい頃に見た祭での屋台や揺れる光の向こうにある漆黒の闇です。

 光と闇というのは私の中で一貫して描いてきたテーマでもありました。私が描く「闇」は政治の汚職や権力闘争のようなものではなく、もっと奥深いところにある闇なのです。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、日本の警察史上最大の作戦に従事した、決して表舞台には出てこない方々に思いを馳せながら物語を紡ぎました。
 
 昨年の晩秋、杵築市を訪れる機会に恵まれました。観月祭の行灯の中の揺れる灯りを見るうちに、まさに私が描こうとする「光と闇」がそこにあると確信して舞台にさせてもらいました。