容姿をイジることのリスクが高まってきた
漫才は難しい。「正解」はない。
結局のところ、正解があるとしたら、自分たちがおもしろいと思った漫才、やっていて自分たちが楽しいと感じられる漫才をやり切るしかない。
そして、アインシュタインの「正解」が準々決勝のネタだったのであれば、その選択に対し誰も何も言うことはできない。
ただ、こうは思う。現代において、容姿をイジるスタイルはいろいろな意味でリスクが高いし、最終的に本人たちが行き詰まるのではないか。
やや話はそれるが、今年の『THE W』の準決勝でMCを勤めていたはりけーんずの前田登がこんな感想をもらしていた。
「太ってる子って、太ってるネタばっかり書かれたら、私は太ってなきゃいけないんじゃないかって思ってしまうんじゃないですかね」
前田がこう心配するように、いわゆる「容姿イジリ」は女性芸人ほど顕著だ。それが芸に昇華されていれば笑えるが、正直「また、モテないネタか……」とうんざりさせられることも少なくない。
女性コンビの決勝進出は3度のみ
M-1において、過去、女性コンビが決勝に進出したことは4度しかない。2005年のアジアン、2006年の変ホ長調、2007、2009年のハリセンボンだ。男女では芸人の数がそもそも違うといってしまえばそれまでだが、女性芸人が自虐ネタに頼り過ぎているせいもあると思う。一発ギャグなら効果的かもしれないが、3分から4分の漫才で、何度も自虐ネタを見せられると空気がささくれ立ってくる。
よいネタとは、ひと言で言えば、誰が演じてもおもしろいものだ。自虐に走ると、ネタを磨く作業が疎かになる。
前田の懸念をある有名女性芸人に投げかけると「(太ってなきゃいけないと)思うでしょうね」と即答した。
だとしたら、それはエンターテイナーとしてどこか歪なのではないか。それとも、それが芸人という生き物なのだろうか。
歪な台は、強い負荷がかかったとき、どこかに無理が生じる。その無理が空気をささくれ立たせているような気がしてならない。