1970年代初頭、アメリカでブラックスプロイテーションと呼ばれる娯楽映画のジャンルが誕生した。
代表作は『シャフト』(1971)、『スーパーフライ』(1972)など。舞台は都市部のゲットー。多くで麻薬の密売人やポン引きを生業にする黒人男性が主役を張り、暴力や性的な描写が目立つ。白人は間抜けな悪人や腐敗した警察官役で、最終的には黒人にとっちめられる。
当時、観客の黒人たちは「ついに自分たちが主人公の映画が誕生した」と歓喜したという。観ればスカッとする作品が人気を博し、ハリウッドは新しい鉱脈を発見したと言われた。
黒人たちを喜ばせ、大儲けしていたのはハリウッドの白人層
ブラックスプロイテーション映画は、そのファッションや音楽、魅惑的なキャラクターが現代のアメリカ文化にも多大な影響を及ぼした。スクリーンに登場する機会を黒人俳優に与えたことも間違いない。しかし、このジャンルはほどなくして姿を消すことになる。娯楽作品とは言え、あまりにもネガティブなステレオタイプ描写が目に余り、実社会で偏見を助長すると抗議運動が始まったからだ。
創作物のなかで懲らしめられる支配層に溜飲を下げたところで、現実社会は変わらない。なぜ主人公たちが麻薬密売人やポン引きなどの危うい仕事をしているか、作中では描かれない。貧しい黒人たちを刹那的に喜ばせ、大儲けしていたのはハリウッドの白人層だ。果たして、これは他人事だろうか。
売れっ子脚本家・野木の2020年
飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子脚本家。そう書けば、本人は嫌がるだろう。しかし、ほかに適切な表現が見つからない。知り合ったのは数年前のこと。頻繁に顔を合わせる仲ではないが、いつ会ってもスッと距離を縮めてくれるのがありがたい。
1年ぶりに会った野木の第一声は「私、ついに『バチェロレッテ』を観ちゃいましたよ」だった。少しは休めるようになったのか。
2020年は1月期に『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京)が、6月からは『MIU404』(TBS)が放送され、映画『罪の声』も公開された。『アンナチュラル』(TBS)、『獣になれない私たち』(日本テレビ)、『フェイクニュース』(NHK総合)がオンエアされた2018年同様、多忙を極めた年に違いない。
「1年おきぐらいに、その間に作ったものがワーッと来るので。減らしたり、先延ばしにしようとはするんですけど。これはやったほうがいいんじゃない? って仕事は、どうしても残っていく」