ワンクールの概念が崩れてしまった2020年の春夏ドラマ。完結したドラマも、いよいよ佳境に入るドラマもあり、更に次から次へと新ドラマも始まっている。そんなイレギュラー編成もお構いなく、ヒットを飛ばしているのがTBSだ。局の看板を背負うプライム帯のドラマはどれもボーダーラインの視聴率10%を超え、Twitterの感想を見ても満足度が高い。

今期のTBSドラマ主演俳優たち。左から多部未華子、堺雅人、綾野剛、星野源 ©文藝春秋

 自粛ムードが漂い始めた半年前は、反対に“TBS以外”が盛り上がっていたようにも思う。日本テレビは『野ブタ。をプロデュース』(2005年)、フジテレビは『やまとなでしこ』(2000年)など、配信サービスではお目にかかれない過去の超人気作を再放送し、お茶の間を盛り上げていた。TBSは、ついこの間終わったばかりの『恋はつづくよどこまでも』(2020年)や、頻繁に再放送されている『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年)を選ぶなど、どこか消極的に見えたのだ。

 しかしドラマが本格的に始まった今、蓋を開ければTBSの一人勝ちになりつつある。イマドキに言うと「TBSしか勝たん!」状態。なかには“ドラマのTBS”と呼ぶ人もいる。今回は、現在放送中の作品を例に、「TBSドラマの勝因」を考えてみたい。

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『半沢直樹』くらい気軽に楽しめるドラマがちょうどいい

 今期のTBSドラマの中で真っ先に思いつくのが、日曜劇場『半沢直樹』だ。視聴率22.0%で華々しい幕開けを飾ったあと、2020年春夏クールをトップで駆け抜けている。前作の最高視聴率42.2%を聞くと感覚がマヒしてしまうかもしれないが、NHKの連続テレビ小説『エール』を超え、2020年に放送された全ドラマの中で1位に君臨した。

 お決まりのセリフ「やられたらやり返す、倍返しだ!」通りの単純明快なストーリーは、前作より更にエンタメ方向へと舵を切り、演技よし・発声よし・滑舌よしの熟練した役者たちによる顔芸合戦へパワーアップしている(以前よりも「倍返しだ!」が少ないと感じるのは気のせいだろうか……)。「まるで時代劇」と言われることもあるが、そのベタな面白さこそが視聴意欲をくすぐり、幅広い層を惹き付けている理由かもしれない。『半沢直樹』だけは見ていると話していた友人は、こうも言っていた。『半沢直樹』くらい気軽に楽しめるドラマがちょうどいいのだと、なるほど。

堺雅人主演の『半沢直樹』(公式HPより)

『わたナギ』に漂う、要素は豊富だけど「深くは追求しない」ライト感

 “ちょうどいい”で成功したドラマは他にもある。火曜22時に放送している『私の家政夫ナギサさん』だ。多部未華子演じる仕事は出来るが家事が全く出来ないアラサー女子・メイが、大森南朋演じる“おじさん”家政夫・ナギサさんに出会い、散らかった部屋や人生をも整えていく。『逃げ恥』の再放送から上手くスライドした『わたナギ』は初回で視聴率14.2%を記録し、右肩上がりで数字を伸ばしていった。