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『わたナギ』には様々な要素が詰まっているが、どのテーマも深くは追求されない。例えば、メイは母親(草刈民代)からの過度な期待に長年悩まされていたのだが、娘たちに同じ苦労を味わってほしくない親心から口煩くなってしまっただけ。おじさんのナギサさんが「お母さんになりたい」と話していたのも、お母さんのように安心感を与えられる存在になりたいとの意味で、現代のジェンダー観に訴えかけるような深い意味は特にない。同僚の陶山薫(高橋メアリージュン)とライバル会社に勤める田所優太(瀬戸康史)との三角関係も、陶山がすんなり身を引いたおかげであっさり終わるのだ。

『私の家政夫ナギサさん』(公式HPより)

『逃げ恥』のような社会性を期待すると物足りなさを感じるかもしれないが、あえて深入りしないことで視聴のハードルをぐっと下げ、あまりドラマを見る習慣がないライト層にも見やすい仕様になっている。ネガティブな要素が少ないのも視聴を継続しやすいポイント。火曜22時という時間帯も、主演の多部未華子も、大きなぬいぐるみのような大森南朋のフォルムも全てが“ちょうどいい”に繋がっている。

ドラマ好きを熱狂させる『MIU404』の魅力

 そして、ドラマ好きとして見逃せないのが金曜22時の『MIU404』だ。脚本家・野木亜紀子が手掛けるオリジナル作品で、警視庁刑事部・第4機動捜査隊(通称:4機捜)に所属するメンバーが、24時間のタイムリミットの中で事件解決に奔走する。綾野剛演じるお調子者だが根は真っすぐな伊吹と、星野源演じる元捜査一課の理論派な志摩のなかなか珍しい塩顔バディは、事件が起きるとメロンパンの移動販売車に乗って現場へと向かう。

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 このように書くとポップな話のようにも思えてくるが、『MIU404』を見た金曜の夜は、“楽しかった”とはまた別の感情に支配される。米津玄師の主題歌『感電』の一節「お前はどうしたい? 返事はいらない」と言わんばかりに、何かを突き付けられている気がしてならない。

綾野剛と星野源がW主演『MIU404』(公式HPより)

 見る者を夢中にさせる『MIU404』はなんと言っても、脚本家・野木亜紀子が描くストーリーが最大の魅力。伊吹たちが所属する4機捜は架空の組織だが、彼らが挑む事件の裏側には実在する社会問題が強く根付いている。あおり運転や外国人労働者問題など、『MIU404』が描いたテーマはいずれも「ドラマだから」「フィクションの世界だから」と割り切れない内容ばかりだ。さらに、事件解決へ至っても一件落着とならない結末が、一段と強い余韻を残す。ドラマ放送終了後に「#MIU404」のハッシュタグがついた考察ツイートで溢れかえるのも、作品に込められたメッセージを余すことなく受け取りたいと思う視聴者の熱量ゆえに発生する現象だろう。

 今を描いた『MIU404』は視聴者に“今見るべきドラマ”としてインプットされ、用事が立て込むはずの週末の夜に画面の前へと向かわせる。クライマックス直前の第10話では、違法ドラッグの売人・久住(菅田将暉)との対峙が本格化。ゲームのように人の心を翻弄し、悪の道へと引きずり込む久住の姿は“メフィストフェレス”という悪魔に例えられている。金曜日の夜にTwitterでトレンド入りする現象を逆手にとり、久住のフェイク情報に踊らされた作中のネット上の人々が「#MIU404」と口々に呟き、伊吹たちの捜査をかく乱させる一幕もあった。その時のTwitterトレンド1位はもちろん、「#MIU404」。ドラマと現実が見事に重なり合う瞬間を作り出し、再び視聴者を騒然とさせた。