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自分の思い通りにならないものは要らない文政権

 尹検事総長と文政権の闘いのゴングが鳴ったのは今年1月。秋法相は就任してすぐに検察内部の人事を行ったが、尹検事総長に近い側近らを地方に左遷するなどし、保守系メディアからは「親文(文政権寄り)配置、検察大虐殺」(中央日報、1月9日)と評された。この後、皮肉にも尹検事総長の人気はうなぎ登り。世論調査で次期大統領候補者のひとりとして名前が挙がるようになった。別の中道系紙記者が言う。

「今回の懲戒手続きの段階から、秋法相側、つまり文大統領がなんとしても尹検事総長を排除したいと思っていることが明るみにでました。検察改革、と謳っていますが、ようは自分の思い通りにならないものは要らないということ。今回の尹検事総長への懲戒処分に納得しているのは文派(文大統領を支持する層)だけでしょう」

 尹検事総長が懲戒処分となった後、文大統領の支持率はどの世論調査でもわずかに上がった。これは「尹検事総長を懲戒処分にした」という文派からの信頼回復という意味合いで、岩盤支持層=文派が戻ったと分析された。支持する理由をみると「検察改革」が挙げられている。

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2019年、検事総長任命時のツーショット ©韓国大統領府

 尹検事総長が申請した仮処分について、行政裁判所は22日午後から審問に入り、クリスマス前後には結論が出るといわれている。

 前出記者が言う。

仮処分についての判断となる2つの争点

「これまで、公務員の懲戒に関してはその処分を停止する仮処分を認容するケースはほとんどありません。懲戒権者側の権利を認めているからです。

 過去に、鄭淵珠元KBS社長(盧武鉉元大統領時に任命され、李明博元大統領時に不正があったとして解任されている。公社の場合、最終的に大統領から任命される)が不当に解任されたという理由から解任を取り消す仮処分を申請しましたが認められず、本案訴訟に持ち込んで勝訴したケースがあります。しかし、本案訴訟は時間がかかる。また、裁判所が最高権力者である大統領が裁可した事案を覆すようなことができるのかという見方も根強い。

 それでも、尹検事総長の場合は、懲戒委員会の手続きの段階から多くの混乱を見せて、懲戒事由も納得できないものばかりです。しかも、一般公務員ではない検事総長を停職2カ月とすれば、『回復できない損害』にも当たるとみられているため、認容する可能性も捨てきれません」

尹錫悦検事総長 ©️時事通信社

 仮処分についての判断となる争点は2つ。停職2カ月という行政処分により、回復できない損害が発生するか否か、そして、行政処分を停止する(停職処分を停止する)ことにより公共福利に重大な影響を及ぼすかどうか、だ。

「回復できない損害」については、懲戒委員会が開かれる前に職務停止となった尹検事総長が、やはり行政裁判所に職務停止を停止する仮処分を申請し、認容されている。行政裁判所は今回も同じ判断を維持するのではないかとも見られるが、「懲戒嫌疑者」と「懲戒処分を受けた者」という立場の違いから、「公共福利への重大な影響」が争点になるといわれている。

 尹検事総長側は、総長不在となれば、現在進めている捜査の進捗に影響がでると強く主張している。