「秋法相の最後の仕事は、政権に不都合な捜査を頓挫させること」
現在、進められている捜査には、「蔚山市長選挙への青瓦台介入疑惑」と「月城1号機原子力発電所閉鎖に関し、不都合な文書を破棄したり、改ざんした疑惑」が含まれる。尹検事総長側は2カ月間の総長不在中に行われる定例の1月の人事で捜査チームが解体の憂き目に遭う可能性が高いとしている。
韓国の検察庁では毎年1月に人事が行われており、来月の人事で、捜査チームが骨抜きにされるのではないかという見方は保守系メディア中心に取り沙汰されている。
秋法相は、辞意は表明したが文大統領はまだ受理しておらず、「秋法相の最後の仕事は、政権に不都合な捜査を頓挫させることであり、来月の人事を行ってから退任するのではないかといわれています」(前出記者)。
21日の世論調査(リアルメーター)では、「尹検事総長は辞任する必要がない」が54.8%、「秋法相と同伴辞任すべき」は38.3%という結果が出た。余談だが、秋法相は来春に行われる予定のソウル市長補欠選挙の候補者として名前が浮上している。
再来年3月に行われる次期大統領選挙にも大きな影響
さて、韓国の行政裁判所は果たしてどんな判断を下すのか。
尹検事総長が申請した仮処分がもし却下されれば、尹検事総長は停職2カ月をそのまま続行し、2月中旬に復職することになる。また、この仮処分が認容されれば、即時、総長職に復職する。
仮処分が却下されれば文大統領の勝利、認容されれば尹検事総長の勝利とする見解もあるが、事はそう簡単ではない。
曺国前法相が辞任に至るまでを発端としたこれまでの文政権の動きは、確実に文大統領離れを引き起こしている。かつては文大統領を支持したという進歩派の論客からは「韓国からは進歩が消えた」「現政権は哲学もビジョンもない、既得権力になった」「ファンダム(ファンクラブ)政治(理念のない支持層が無条件に文大統領を支持したり、自分たちの私益を追求しており、そんな支持層だけに向けた政治が行われているという意味)」「民主主義の崩壊」と文大統領と現与党を批判する声が高まっている。
尹検事総長VS文大統領に見える抗争は、1987年、「民主化」のために中心となって抗争した進歩層、つまりは今の文政権を作った進歩層へ決定的な亀裂と分裂をもたらすかもしれない。来春のソウル・釜山市長補欠選挙や再来年3月に行われる次期大統領選挙にも大きな影響を及ぼすことになる、韓国政治のターニングポイントとなる「事件」でもあるのだ。