菅首相の「ステーキ会食」記事はもうお腹いっぱいというあなた。ちょっと待ってください。視点を変えると今の政治のポイントがたくさん詰まっていたのです。そのご報告。

 まず大事なキーワードは「王貞治」でした。

二階氏が安倍首相に「王カード」を切った日

 今年の6月以降、緊急事態宣言が明けてから自民党政治家の会食が活発になっていた。秋の役員人事に向けてだろう。特に二階氏の会食情報が目立った。

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 すると安倍晋三首相とプロ野球・ソフトバンクの王貞治会長らが7月22日都内で会食。つないだのは二階氏だった。

-二階俊博自民党幹事長 ©文藝春秋

 王氏は会食後に「二階氏とは30年来の付き合いがあるので、声をかけてもらった」と記者団に語っている(毎日新聞WEB7月22日)。

 安倍首相は「王氏との接点はこれまで見られなかった」という(東スポ)。となると二階氏はこのとき初めて安倍首相に「王カード」を切ったことになる。幹事長留任アピールを込めた大事な夜だったのか。権力把握に向けた妖怪たちの会食。夕刊フジは二階氏と麻生氏の会食を「“怪食”」と書いた(6月18日付)。たしかに!

 そして今回のステーキ会食だ。

二階氏の“怪食”を追うだけで見える権力構造

 14日【午後】8時50分、東京・銀座のステーキ店「銀座ひらやま」。自民党の二階幹事長、林幹雄幹事長代理、プロ野球・ソフトバンクの王貞治球団会長、俳優の杉良太郎、タレントのみのもんた、政治評論家の森田実各氏と会食。9時44分、議員宿舎。(読売新聞)

 私はこの中にも「王貞治」がいることに注目した。二階氏は王氏を引き連れて菅首相と会ったのか?

 すると会食に参加していた森田実氏が共同通信の取材に対し「二階氏の仲間が集まる忘年会のような会」と説明した。

 あれは二階のトシちゃん主催の忘年会だったのである。王氏がいた意味もすんなりわかる。

菅首相との会食に参加した王貞治ソフトバンク会長 ©文藝春秋

 菅首相は会食が始まって2時間ほどが経過した午後9時前に駆け付けていた。秋の人事がまだわからない7月には「王カード」を切って前首相と会食した二階氏だが、季節は変わり、現在は自分の忘年会に現首相が慌てて駆けつける。菅首相にとってはいきなりステーキである。

 二階氏の会食(怪食)を追うだけで権力構造が見えると言えまいか。菅首相は大人数の会食を批判されると「誤解を招いた」と言ったが「二階に招かれた」が正しい。

 さらにこの日は「怖い話」もあった。