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Go To全国停止の裏にあった“Go To 二階”キャンペーン 菅流トップダウンに見えてきた限界

「首相が全て自分で差配しようとする」

2020/12/22
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「勝手なことしやがって」発言の記事公開日時の意味

 菅首相はステーキを食べる前、年末年始の「Go Toトラベル」の全国停止を発表した。

 翌日の読売新聞にはその過程を「根回し不十分」とし《自民党幹部は14日夜、「勝手なことしやがって」と政府の対応に毒づいた。》というコメントが。

 今の自民党で観光業に肩入れし、菅首相に毒づける人物って…。

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菅義偉首相 ©JMPA

 毎日新聞WEBには《二階派幹部は突然の一時停止表明に「どういう趣旨なのか。勝手なことをしやがって」と不満を漏らした。》

 ここでは「二階派幹部」となっていた。

 重要なのはこのWEB記事は「12月14日 18時28分」に公開されたもの。この意味はゾクゾクする。

 つまり、二階氏と菅首相のステーキ会食「夜8時50分」の前に、二階本人もしくは本人の意向を代弁した二階派幹部が「勝手なことをしやがって」と菅首相に向けて矢を放っていたことになる。

もしかして菅首相もうピンチ?

 こうなると菅首相としてはなんとしても鬼の宴会ならぬ二階の宴会に駆けつけなくてはならぬ。Go To二階キャンペーンという事情が見えてくる。

 菅首相にとって二階氏は「Go To」仲間だけでない。何よりも自民党総裁選で勝利の流れをつくってくれた人物だ。そんな二階氏を怒らせたら意外とモロい党内基盤が可視化されてしまう。もしかして菅首相もうピンチ?

 自民党内で首相に対して普通に文句が出始めた今の状況だが、実は政権内での菅首相を紙面で追うとこれもヤバさしか感じないのである。

 75歳以上の後期高齢者の医療費負担増という議題では菅首相と公明党の山口那津男代表のトップ会談でケリがついた。これに対して

《政権幹部は自嘲気味に語る。「この政権は菅首相が一人で全部やってしまう」》(読売12月11日)

山口那津男公明党代表 ©文藝春秋

 いわゆる「トップダウン」だが視点を変えて見るとどうだろう。

 就任3ヵ月を振り返った『首相、説明不足の3ヵ月』(毎日新聞12月16日)では、Go To停止にしろ学術会議問題にしろ、ことごとく説明をせずに裏で一人で決断する「菅流」について書かれている。こうなるとトップダウンの過程が危うい。