オフでも午前5時に起床する。それが来年プロ18年目、40歳のシーズンを迎える鳥谷敬内野手の過ごし方だ。家族が起きる前からトレーニングをして汗を流し子供たちが学校に行くのを見送り、また体を動かす。この男が鉄人と呼ばれる所以は、たゆまぬ日々の努力の積み重ね。最善の準備を重ねマリーンズ移籍2年目、不惑の年に挑む。
「チームから使いたいと思われる状態にしたい」
「必要としてもらっている。戦力として考えていただいているというお話を球団からいただいて、来年もやろうと思った。プロに入った時に40歳の年でショートを守るというのを一つの目標に立てていた。ショートで勝負が出来る状態。ショートで試合に出られる状態にして来年を迎えたい。チームから使いたいと思われる状態にしたい」
束の間の静かなオフを迎えているはずの鳥谷は、燃えていた。昨年12月はタイガースを退団。現役続行を模索して、まだ所属球団が決まらない状態にあった。1年経って今はマリーンズになくてはならない貴重な存在となっている。その功績を周囲は「精神的支柱」と称するが若い選手に経験を伝え鼓舞する存在に留まることはない。もう一度、春季キャンプから果敢に競争に飛び込み一軍入り。そして慣れ親しむ遊撃での試合出場を狙う。
今シーズンは難しい調整を余儀なくされた。春季キャンプは所属先が決まらず、自宅周辺で孤独なトレーニングに明け暮れた。マリーンズ入団が決まったのは3月10日。しかしすぐに開幕延期が決まり、チームは当面の間、活動を休止した。シーズン中は調整の難しさを否定したがオフに入った今、戸惑った微妙な感覚の違いを口にする。
「打席はどうしても練習と違う本番の感覚が大事になる。ボールの見え方と実際に振った感覚を合わせるのに思った以上に時間がかかってしまった。感覚は探り探り。夏場ぐらいにようやく戻せた。来年はキャンプから入っていけるのは大きい」と鳥谷。2021年は開幕までをしっかりと逆算しキャンプからしっかりとアピールできる体作りを行うべく日々、体を磨いている。