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「ピンチと思うな、チャンスと思え」ロッテ・鳥谷敬が座右の銘に込めた思い

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/06/06

 座右の銘はその人の生き方や価値観を表す。タイガースからマリーンズに移籍した鳥谷敬内野手は球団公式インスタグラム内で行ったファンからの質問に答える企画で座右の銘を聞かれ、「ピンチと思うな。チャンスと思え」と返答した。

キャッチボールの相手すらいなくなった孤独の日々

「小学校の時の野球チームのコーチが卒業の際にボールの寄せ書きに書いてくれていたもので、その時は深くは感じていませんでしたが、中学か高校の時に部屋の整理をしていてこのボールが見つかり、この言葉が目に留まりました。嫌な事があったり、なにか厳しい状況に置かれた時にこの言葉を思い出します」

 まさに昨今の鳥谷の生き方を表すような言葉だ。昨年オフにタイガースを退団。長い空白期間を経て3月10日にマリーンズと契約を交わし入団を発表した。ようやく表舞台に戻ってきた。

©千葉ロッテマリーンズ

 所属チームが決まらない日々。年末年始こそ練習相手もいたが2月のキャンプインのタイミングからはキャッチボールの相手すらいなくなった。誰かにお願いをすれば手伝ってくれた人もいたはずだ。ただ、人に迷惑をかけたくはない。野球界以外の仲間にもそれぞれの仕事がある。だから自分からお願いすることをよしとしなかった。自宅横の急坂を黙々と走り、自宅の敷地内で柔らかいボールを使ったティー打撃で感覚を確かめた。一番の日課は自宅のガレージでの壁当てだった。そんな苦しい状況下を鳥谷は今、笑って振り返る。それはまさにピンチをチャンスと捉えた結果に思える。

「ボクはマリーンズに入る前に練習をする場所もなければ、相手もいない時期を過ごした。その経験は自分にとって大きかった。今までいかに恵まれていたか。限られた条件の中で何が出来るか、自分のベストはなにかをつねに自問自答をした。そういう事を考えて行動に移した時間はとても大事な事だと分かった。今、なにが出来るか? 何をしたか? それを考えるだけでも今後に繋がる事を知った」