昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/12/26

陽性者の少ない国では“安全性”がより重要

 もちろん、重大な健康被害が100万人に1人あるいは1000万人に1人と極めてまれにしか起こらないこともあり得ます。そうなれば、東京でもワクチンは受け入れられやすいでしょう。つまり、私が言いたいのは、米国のように陽性者が桁違いに多い国では、ワクチンの安全性に少し問題があっても受け入れられやすいが、陽性者が少ない日本のような国では、ワクチンの安全性がより重要になってくるということです。

 ワクチンは「推進派」と「反対派」に極端に分かれやすく、ネット上ではお互いに激しく攻撃し合う傾向が見られます。しかし、リスクに目を瞑ってメリットばかりを強調するのも、メリットに目を瞑ってリスクばかりを強調するのも、私には同じ穴の狢に見えます。ワクチンの真価を科学的に判断するためには、好悪の感情ではなく、客観的な数字に基づいて議論すべきです。

©️iStock.com

 それだけでなく、健康被害に関しては、ワクチン接種後に起こった何らかの症状と、ワクチンとの因果関係を直接証明することはとても難しいという問題もあります。そのため、ワクチンによる健康被害を訴えてもなかなか救済されず、逆に被害を訴える人たちがネット上でワクチン普及の邪魔者として叩かれることもあります。

得られるメリットと起こりえるリスク

 これは本当に悲しいことだと私は思います。健康被害を訴える人たちは、他の多くの命を救う代わりに、犠牲になった人なのかもしれないのです。ですから、ワクチン接種後の一定期間内に重い症状が出た人には因果関係の証明に関係なく手厚く保障し、温かく包み込む社会であってほしいと願っています。

 新規のワクチンが社会に受け入れられるためには、得られるメリットと起こりえるリスクを包み隠さず説明して、健康被害を被った場合でもきちんと対応してくれるという安心感が必要です。政府や医療界のトップの人たちには、こうした点を踏まえた周到な準備と思慮深いリスク・コミュニケーションを取りながら、ワクチン接種の計画を進めていただくよう願います。

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事