「指定暴力団住吉会幸平一家が暴れ回っていて、手がつけられない状態です。2020年6月以降、新宿・歌舞伎町でキャバクラ嬢や風俗嬢の“スカウト狩り”を派手に行い、10月に逮捕者を出しているほか、12月6日には群馬県太田市の武蔵野病院前で指定暴力団稲川会山川一家系の組員が遺体で見つかっています。

 これは前日の5日に神奈川県横浜市の高田中央病院前で遺体が発見された幸平一家系組員が集団暴行のうえに殺害されたことへの報復とみられています。暴力団対策法の改正や暴力団排除条例で窮地に追いやられているはずの暴力団にあって、これだけ派手に暴れ回るとは、ずいぶんと警察もなめられたものです」

警視庁 ©iStock.com

 警視庁組織犯罪対策部や東京地検特捜部の取材歴が長い、ある現役新聞記者はこう語る。幸平一家の加藤英幸総長は、2007年に第13代総長を襲名した人物だ。それ以前は幸平一家傘下の加藤連合(現加藤連合会)を率いていた。

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死刑執行を遅らせるために2件の殺人事件への関与を告白

「加藤連合は2003年、傘下の矢野睦会(当時)が群馬県前橋市のスナックで4人が死亡する拳銃乱射事件を起こしたことで知られます。この事件は、2001年に東京都葛飾区の葬儀場『四ツ木斎場』で住吉会系組幹部の通夜が行われていた際、稲川会大前田一家(当時)系組幹部らが乱入して住吉会系組幹部2人を射殺した事件の報復です。住吉会と稲川会の間では“手打ち”が行われていましたが、和解に納得がいかなかった矢野睦会の矢野治会長が部下に指示し、大前田一家元幹部を執拗に付け狙った末に民間人を巻き込んで起こしたものです。

住吉会幹部が射殺された四ツ木斎場を現場検証する捜査員ら(2001年8月) ©時事通信社

 矢野氏は結局、殺人の首謀者として警視庁に逮捕され、死刑判決が確定しましたが、刑の執行を遅らせる目的で新たに2件の殺人事件への関与を告白。しかも公判では否認に転じ、東京地裁は2018年12月、告白を『引き延ばし目的』と認定したうえで無罪判決を出しました。矢野氏はこれで絶望したのか、2020年1月に東京拘置所で自殺をしています。前橋の事件は幸平一家の“武闘派”としての側面を語るうえで、外すことのできないエピソードです。幸平一家には警視庁も警戒を強めているようです」(同前)