やる気って、情熱なわけですよね。コロナというのは人間が生きる上でとても大切な情熱まで奪っているんだと改めて気づかされたんです。アスリートも、この状況が延々と続くのであれば情熱が揺らいでしまうかもしれない。でも、心は変えられるので、少しでも心をポジティブにしていかないと。
「僕はやりたいことしかやってない」いつもある葛藤
ーー自分では熱い男とは思っていないと仰っていましたが、やはりコロナ禍だからこそ松岡さんに元気にしてもらいたいと期待する人は多いと思います。それを感じたり、元気にしないとみたいな使命感が生まれてきたりはするものですか?
松岡 使命感というような立派な思いはないですね。本当の意味で人々を元気にしたいんだったら、ここで取材を受けている場合じゃない。もっと違う形で世の中に出て、死にものぐるいでやれることをやらないと。たとえば政治家になって社会の構造を良くしたり、支援に力を尽くすのが、本当の意味で元気にすることだと思います。
でも、僕はその選択をしなかったわけですよね。自分に向いているか向いていないかはわかりませんが、心の声を聞いた時にそれはしたくないなと思ったから。ほんと、僕はやりたいことしかやってないんです。そう考えた時に、ある意味で自分はすごく卑怯だなと考える時もあるし。
ーー使命感ではなく、葛藤が生じることがあると。
松岡 すごく人生を楽しんではいます。やりたいことをやっていますから。だけど、やっぱりどこかで「こんなんでいいのかな」って考え込むことがあります。みんな苦しんでいるのに、自分はこんなことしている場合なのかって、そういう葛藤はいつもあります。
来年のオリンピックに思うこと
ーーあえてお訊ねしたいのですが、2021年にオリンピック・パラリンピックは開催されるべきだと思いますか?
松岡 やれる環境にあるのであれば、これまでにはない使命感を持ったオリンピック・パラリンピックになるでしょう。世界がひとつになれるはずのオリンピックなのに、各国が足並みを揃えられない部分が出てきたり、経済的な部分で肥大化してしまったと言われるようになったりと、回を重ねるごとに僕のなかでも疑問視することが多かった。
ただ、今回の東京オリンピック・パラリンピックが開催されるとなれば、コロナを乗り越えるという人々の希望がそこに集まりますし、勝ち負けだけではなく、スポーツを通して世界をひとつにするという本来のオリンピック精神を浮き彫りにできるのではないでしょうか。
そうした大会の実現へと向かわせるリーダーは、やはり開催国である日本なんですよね。開催が決まったら、そこは日本の皆さんで一丸となって応援したいですね。