Q 肝っ玉母さんになりたい

 自他ともに認める心配性です。7歳の娘がいます。よく気がつく優しい女の子ですが、小学校最初の面談の第一声で先生に「○○ちゃんは心配性ですか」と言われました。すごい怖がりで、いつも心配ばかりしています。肝っ玉母さんのようにおおらかに子育てしたいのですが、無理そうです。無理そうなんですが、何かアドバイスいただけますでしょうか。P.S.キリンジファンです。(40代・女性)

A いつか娘さんが旅立つ時に一度だけ、肝っ玉母さんを演じてみてください

 うちの母はそれはそれは心配性です。一緒に飛行機に乗った時、ベルトを締めながら世界の飛行機墜落事故の話をしてくるほどのおちゃめな心配性です。そしてその母に育てられたボクはもちろん生粋の心配性です。心配性すぎて文春オンラインで、人の心配にまでこうして乗ってるぐらいの心配性の黒帯です。母は自動車教習所にボクが通い始めた時、ずっと交通事故を目撃した話をしてきました。アメリカに旅行に行くと聞けば、銃社会のことで大騒ぎです。テレビの仕事に就いたら過労死の話、ラーメンを最近は2日に1回食べていると言えば糖分、塩分の多さから身体を壊した人の話をしてきます。ただボクが初めて一人暮らしをする時、母はまったく心配を見せなかったんです。

 家を出て行くその日、荷物を引越し業者の人たちがドサドサと運んでいました。母とボクはキッチンでその状況を見ています。心配性の母のことが、心配だったので「なるべく顔出すから」と一言言いました。「なに言ってんの、こっちのことは大丈夫だからしっかりやっていきなさい」みたいなことを母はその時、言ったんです。あれ、なんて思いながら荷物は片付けられていきます。トラックが出発して、ボクは電車で引越し先に向かうことになっていました。駅にはわざわざ母が見送りにきてくれました。ニコニコ笑って口元を押さえながら手を振る母に、小さく手を振りかえしながら、ボクはゆっくり階段を上がっていきました。その時なんとなく心配が疼き、階段を数段下がって、そろりと改札の方を覗いてみると、母が顔を覆って泣いていたんです。ボクはすぐに踵を返してもう一度、階段を上がってホームを目指したのを覚えています。

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 自他ともに心配性と認めるあなた、娘さんもしっかりした思いやりのある心配性に育つと思います。いつか娘さんが旅立つ時に一度だけ、肝っ玉母さんを演じてみてください。心配性の娘さんは、そのあなたの頑張りを心に留めて、しっかりした歩調で階段を上がっていくことが出来るでしょう。

P.S.キリンジの『エイリアンズ』は心配性の応援歌だと個人的には思っています。

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